今日は企業経営理論H27第13問について解説します。
人間や組織は、単純化や経験則に頼って意思決定をすることが多い。こうした単純化の方法は、ヒューリスティックと呼ばれ、時には論理的な意思決定に対してバイアスをかけてしまうこともある。このようなヒューリスティックやバイアスに関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア ある選択肢に好意を抱いた人は、その選択肢を支持するような証拠を探し求め、データをそのように解釈する「後知恵バイアス(hindsight bias)」に陥りやす
い。
イ 同じ業績であっても、上司のそばに席を置いている部下の方が、遠くの席の部下よりも高く評価される傾向がある場合には、「確証バイアス(confirmationbias)」が作用している可能性が高い。
ウ 肯定的仮説検証現象が起きると、結果が出たあとにものごとを振り返った場合、他の結果も起こりえた可能性を無視してしまう「感情ヒューリスティック(affect heuristic)」に陥りやすい。
エ 人間が意思決定する際に、「営業に適した人は社交性が必要だ」といったように、あらかじめ抱いている固定観念に合った特性を見いだそうとする「代表性ヒューリスティック(representativeness heuristic)」を利用する傾向がある。
オ 人間は天気の良い日には楽観的になって、株価が上昇したりするが、このような効果は「利用可能性ヒューリスティック(available heuristic)」に依拠する。
解説
今回は、意思決定に影響を及ぼす感情に関する問題です。 それでは早速各選択肢を見ていきましょう。
選択肢アは、「後知恵バイアス」は物事が起きてからそれが予測可能だったと考える傾向であり、この選択肢は「確証バイアス」の説明です。
よって、この選択肢は×と判断できます。
選択肢イは、「確証バイアス」は仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のことであり、この選択肢は「感情ヒューリスティク」の説明です。
よって、この選択肢は×と判断できます。
選択肢ウは、「感情ヒューリスティック」は感情に従って判断や意思決定してしまう現象のことです。一方肯定的仮説検証現象は、ある仮説が正しいかどうかを他者に確かめるとき、その仮説が正しければ肯定的な回答が返ってくるような質問をしてしまうことです。よって設問のような関連性は薄いと思われます。
よって、この選択肢は×と判断できます。
選択肢エは、「代表性ヒューリスティック」は、典型的であると思われる事項の確率を過大評価しやすい意思決定プロセスのことを指し、設問の例はに近い意思決定モデルです。
よって、この選択肢は〇と判断できます。
選択肢オは、「利用可能性ヒューリスティック」は、人間が意思決定を行うときに、よく見るものや印象に残りやすいものを基準に選択を行う思考方法のことです。「天気の良い日」に「楽観的」なることは、代表的なイメージとの関連は薄く定義とは一致しません。
よって、この選択肢は×と判断できます。
以上から、正解は選択肢エとなります。