今日は経営法務のH28第11問について解説します。
不正競争防止法以下、「法」という。に規定する商品等表示に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、各選択肢中の「周知表示混同惹起行為」とは法第2条第1項第1号に規定する行為をいい、「著名表示冒用行為」とは同第2号に掲げる行為をいう。
ア 高級車ブランドとして知られる A 社の著名な自動車に関する商品表示を、Aと無関係の者である B がサングラスに付して販売している。この場合、B の行為は、著名表示冒用行為となると考えられるが、周知表示混同惹起行為となることはない。
イ 製菓メーカー C 社のポテトチップスの表示甲が普通名称化し、取引者・需要者間で普通名称として用いられるようになった場合、この普通名称化の前に既に表示甲がポテトチップスを表示するものとして著名であるときは、当該表示を普通に用いられる方法で使用する行為は、著名表示冒用行為となる。
ウ ピザの宅配業者である D の営業表示乙は、現在、ある地域で周知である。表示乙が周知化する前から、D と同一地域でピザの宅配業者 E が表示乙と類似の表示である丙を使用しているという事実がある。この場合、D は、E による丙の使用に不正の目的がある場合でも、E による丙の使用を差し止めることができない。
エ ヨーロッパの世界的アパレル・ブランドである企業 F の著名な商品表示を、スナック G がわが国の地方都市の郊外において商号として一店舗のみの看板などに用いている。この場合、FG 間に競争関係はないものの、周知表示混同惹起行為となることがある。
解説
不正競争防止法に関する問題です。
それでは早速各選択肢を見ていきましょう。
選択肢アについて、周知表示混同惹起行為とは、他人の「商品等表示」として需要者の間で広く認識されているものと同一・類似の商品等表示を使用し、他人の商品または営業と混同を生じさせる行為の禁止です。設問では「高級車ブランドとして知られる A 社の著名な商品表示」を無関係な物が商品(サングラス)に付して販売しているので、この行為に該当します。
よって、この選択肢は×と判断できます。
選択肢イについて、著名表示冒用行為とは、 自己の商品等表示として、他人の著名な商品等表示と同一あるいは類似の表示を使用し、またはそのような表示が使用された商品を譲渡引渡等することの禁止です。また、普通名称化とは例として「エレベーター」のように既に一般名称化しているものは、商標登録が受けられません。設問では「ポテトチップスの表示甲が普通名称化」しているので、当該表示を普通に用いられる方法で使用する分には、著名表示冒用行為にあたりません。
よって、この選択肢は×と判断できます。
選択肢ウについて、Eには営業表示を先に使用している事実がある以上、先使用権により、引き続き自己の商標を使うことが認められる権利がありますが、「E による丙の使用に不正の目的がある場合」については除外されます。
よって、この選択肢は×と判断できます。
選択肢エについて、選択肢アの周知表示混同惹起行為の要件が成立すると考えられます。
よって、この選択肢は○と判断できます。
以上から、正解は選択肢エと判断することができます。