今日は経済学のH25第19問について解説します。
いま、ある地方自治体は、住民(同質的であると仮定)へ地方税を課税して得た財源で公共サービスを提供している。
住民は公共サービスを享受しつつ、地方税の税引き後所得を用いて私的財を消費している。
もし、地方税をゼロとすれば、私的財の消費量はAとなり、所得のすべてを納税すれば公共サービスの消費量はBとなる。
これが予算制約ABとなり、この地方自治体の代表的個人は予算制約上の点Eを選好しているものとする。
この地方自治体が当該住民の負担にならない「補助金」を国から得たとする。地方自治体は、この一部ないし全部を住民に現金で給付することもできるし、公共サービスを直接的に提供することもできるものとし、この状況が予算制約CDとして描かれている。もし、この「補助金」の全額が住民に対して現金で給付されたならば、代表的個人は点Fを選好するものと考える。この図に関する説明として、最も不適切なものを下記の解答群から選べ。
〔解答群〕
ア 「補助金」を得た地方自治体がIの公共サービスを提供するならば、この地方自治体は住民の効用を最大化している。
イ 「補助金」を得た地方自治体がKの公共サービスを提供するならば、住民の効用は点Fが選択される場合よりも低下する。
ウ 「補助金」を得た地方自治体がKの公共サービスを提供するならば、それは「フライペーパー効果」とみることができる。
エ 「補助金」を得た地方自治体がその全額を住民へ現金で給付すると、「補助金」を得る前と比べて、住民の地方自治体への納税額は減少する。
解説
フライペーパー効果(ハエ取り紙の理論)に関する問題です。
フライペーパー効果(ハエ取り紙の理論)とは、補助金が地方自治体のもとに入ると減税などで住民に還元されることなく、財政支出という形で地方政府に張り付いてしまうことから、それを紙に張り付くハエに例えた理論です。
今回は不適切な選択肢選びます。
選択肢アは、点Iは国から得た補助金をすべて現金で住民に支給した最適消費点Fの公共サービス量であるため住民の効用は最大化している状態である。
この選択肢は○と判断できます。
選択肢イは、点Iから点Kに公共サービスを増やした場合は予約成約線CDのJへ移動し住民の消費量はH→Jへと減少する。Jを通る仮想の無差別曲線は原点に対してFを通る仮想の無差別曲線に対して、左下に移動している状態で住民の効用は低下したと考えられます。
この選択肢は○と判断できます。
選択肢ウは、選択肢イの状態について、国の補助金が減税などで住民に還元されることなく、財政支出という形で増加(地方政府に張り付いてしまい)効用を低下させたと考えられます。
この選択肢は○と判断できます。
選択肢エは、補助金を得る前の最適消費点である点Eと受給後の点Fの比較では、公共サービスの量は増加している。公共サービスは税金もしくは補助金で賄われるため、「補助金」を全額を住民へ現金で給付すると公共サービスの財源たる納税額が増加ことになる。
この選択肢は×と判断できます。
以上から、正解は選択肢エとなります。