今日は経済学のH28第16問について解説します。
いま、ある合理的個人が、限られた所得の下で2つの財(X,Y)を需要する状況を考える。2つの財の需要量は、それぞれDX およびDYと表記し、財Xの価格をPXと表記する。下図は、予算制約線 と無差別曲線 が点Aで接する状況から、他の条件を一定としてPXのみが下落し、予算制約線と無差別曲線が点Bで接する状況へと変化した様子を描いたものである。この図に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。
a 財Yの価格を一定としてPXが下落したとき、代替効果でDXが増加した。同時に、PXの下落は、所得効果によってDXを減少させた。上図では、代替効果よりも所得効果が大きいため、財Xはギッフェン財の性質を示している。
b 財Yの価格を一定としてPXが下落したとき、代替効果でDXが増加した。同時に、PXの下落は、所得効果によってもDXを増加させた。上図では、代替効果と所得効果がともに DX を増加させていることから、財Xはギッフェン財の性質を示している。
c 財Yの価格を一定としてPXが下落したとき、DYが増加した。これは、財Yが財Xの粗代替財であることを示している。
d 財Yの価格を一定としてPXが下落したとき、DYが増加した。これは、財Yが財Xの粗補完財であることを示している。
〔解答群〕
ア aとc
イ aとd
ウ bとc
エ bとd
解説
スルツキー分解に関する問題はミクロ経済の定番問題です。
まとめシートに詳しく解法を説明していますのでご確認ください。
・予算制約線2と平行で無差別曲線1と接する点をCとします。
・点ABCのX軸に対する位置関係において、
A→B 価格効果 (-)
A→C 代替効果 (+)
C→B 所得効果 (ーー)になります。
それではabcdを見ていきましょう。
aについて、A→Bの価格効果マイナス,代替効果はプラスになりますが、所得効果はマイナス、その大きさは所得効果の方が大きいので、代替効果と所得効果を合わせても、X財の消費量は減少しています。よって、財Xはギッフェン財です。よって、「財Yの価格を一定としてPXが下落したとき、代替効果でDXが増加した。同時に、PXの下落は、所得効果によってDXを減少させた。代替効果よりも所得効果が大きいため、財Xはギッフェン財の性質を示している。」との記述の通り、
○と判断できます。
bについてはaの通り×です。
cとdについて、Xの価格下落によりY需要が増えるという動きは、粗代替財ではなく粗補完財となります。
よって、dが○です。
以上から、正解は選択肢イとなります。