今日は財務・会計のH27第18問について解説します。
資本資産評価モデル(CAPM) に関する記述として最も適切なものはどれか。
ア β が 0以上1未満である証券の期待収益率は、無リスク資産の利子率よりも低い。
イ β がゼロである証券の期待収益率はゼロである。
ウ 均衡状態においては、すべての投資家が、危険資産として市場ポートフォリオを所有する。
エ 市場ポートフォリオの期待収益率は、市場リスクプレミアムと呼ばれる。
解説
資本資産評価モデル(CAPM) の理論問題です。
まず、CAPMの計算式を確認しましょう。CAPMの計算式はまとめシートにも記載していますが、
個別証券の期待収益率(証券の期待収益率)
=リスクフリーレート(無リスク資産の利子率)+個別証券のリスクプレミアム・・・①
個別証券のリスクプレミアム=β×市場の期待収益率・・・②
市場の期待収益率(市場ポートフォリオの期待収益率)
=市場のリスクプレミアム+リスクフリーレート ・・・③
と表せます。
これを踏まえて各選択肢を見ていきましょう。
選択肢アについては
式①と式②から
証券の期待収益率=無リスク資産の利子率+β×市場の期待収益率
と表せます。
すると、β=0のときは
証券の期待収益率 = 無リスク資産の利子率
となり成立しません。
よって、この選択肢は×と判断できます。
選択肢イについては、
選択肢アで確認したように
β=0のときは
証券の期待収益率 = 無リスク資産の利子率
となり、必ずしも期待収益率は0とはなりません。
よって、この選択肢は×と判断できます。
選択肢ウについては、投資家が無リスク資産と危険資産を保有する場合、投資家が持つ危険資産のポートフォリオは下記の図のT、つまり市場(マーケット)ポートフォリオの1点に定まります。
よって、この選択肢は○と判断できます。
選択肢エについては、式③のとおり、市場ポートフォリオの期待収益率は市場のリスクプレミアムに無リスク資産の利子率を加えたものです。
よって、この選択肢は×と判断できます。
以上から、正解は選択肢ウとなります。
◆ブログ村参加しています◆
気に入っていただけたら、クリックお願いします!
2件のフィードバック
選択肢(ウ)の解釈について、H28 第18問(設問2)の解説と比較しながら理解を試みているのですが、疑問がクリアできず質問させてください。
H28の解説では、選択肢「ア 均衡状態においては、すべての投資家が所有する危険資産と無リスク資産の比率は同じである。」の解説として、「無リスク資産が存在するとき、投資家は直線FD上のいずれかの組み合わせで資産を保有します」となっております。
本問題においては、資本市場線上のリスクゼロ(安全資産のみでポートフォリオ構成)の点から、資本市場線が効率的フロンティアと接する市場ポートフォリオの点までの資本市場線上のいずれかの組み合わせで資産を保有する。ということにはならないのでしょうか?
コメントありがとうございます。
ちょっと解説があっさりしすぎていて言葉足らずの面がありましたので、解説を大幅に改定し、図を追加しました。
その上でご質問にお答えします。
H28の問題では危険資産と無リスク資産の比率について書かれていました。しかし、こちらの問題の場合、「危険資産として市場ポートフォリオを所有します。」とあり、危険資産のポートフォリオがどうなのかが問われています。
安全資産と組み合わせる場合、危険資産のポートフォリオは、図の点Fから引いた直線が曲線ABに接する点である市場ポートフォリオ(T)となります。
そのため、危険資産と無リスク資産の組み合わせとしてはおっしゃる通り、資本市場線上のいずれかの組み合わせとなりますが、そこに組み込まれる危険資産のポートフォリオとしては、すべての投資家が市場ポートフォリオを保有することになります。