今日は、令和7年度 第1問について解説します。
成年後見に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
① 成年被後見人である賃貸人が賃貸借契約を締結した場合において、締結時に賃貸人の判断能力が回復していたとしても、家庭裁判所により後見開始の審判が取り消されていなければ、成年後見人は、賃貸人本人が3か月前に締結した賃貸借契約を取り消すことができる。
② 賃貸人が意思無能力の場合、賃借人が賃貸借契約の解除の意思表示をするために必要なときは、賃借人は、利害関係人として、家庭裁判所に賃貸人の後見開始の審判を請求することができる。
③ 成年被後見人である賃貸人が、契約期間を2年とする定期建物賃貸借契約を締結しようとするときは、成年後見人の同意を得て、賃貸人本人が賃貸借契約を締結することができる。
④ 賃貸人の後見開始の審判がなされたときは、成年後見人は、その審判を理由として、存続中の賃貸借契約を取り消すことができる。
解説
成年後見に関する問題です。
認知症、知的障害、精神障害などにより事理を弁識する能力が欠ける者や、不十分である者が家庭裁判所の審判を受けることによって、成年後見、保佐、補助の制度が適用されます。
成年被後見人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあって、家庭裁判所で後見開始の審判を受けた者です。
それではさっそく選択肢を確認しましょう。
選択肢 ①
成年被後見人である賃貸人が賃貸借契約を締結した場合において、締結時に賃貸人の判断能力が回復していたとしても、家庭裁判所により後見開始の審判が取り消されていなければ、成年後見人は、賃貸人本人が3か月前に締結した賃貸借契約を取り消すことができる。
〇適切です。
成年被後見人が行った法律行為は、保護者である成年後見人が取り消すことができます。
仮に契約締結時に一時的に判断能力が回復していたとしても、
家庭裁判所による後見開始の審判が取り消されていない限り、形式上は「成年被後見人」である状態に変わりはありません。
したがって、その者が締結した契約について、成年後見人は取り消すことができます。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
選択肢 ②
賃貸人が意思無能力の場合、賃借人が賃貸借契約の解除の意思表示をするために必要なときは、賃借人は、利害関係人として、家庭裁判所に賃貸人の後見開始の審判を請求することができる。
×不適切です
家庭裁判所は、一定の請求権者の請求により、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者について後見開始の審判をすることができます。
後見開始の審判を請求することができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、検察官などです。
賃借人はこれらの請求権者に含まれません。
つまり、賃借人は、利害関係人として、家庭裁判所に賃貸人の後見開始の審判を請求することはできません。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ③
成年被後見人である賃貸人が、契約期間を2年とする定期建物賃貸借契約を締結しようとするときは、成年後見人の同意を得て、賃貸人本人が賃貸借契約を締結することができる。
×不適切です
成年後見人は、代理権、追認権、取消権が認められています。
一方で、同意権は認められておらず、成年被後見人が成年後見人の同意を得て行った行為であっても、取り消すことができます。
これは、判断能力が欠いているとされる成年被後見人は、成年後見人の「同意」のとおりに本人が行動できるとは限らないためです。
また、成年後見人は成年被後見人の利益のため、成年被後見人を代理して法律行為を行います。
そのため、成年被後見人の建物賃貸借契約などの法律行為については、成年被後見人が代理して行うことができます。
つまり、成年被後見人である賃貸人が、契約期間を2年とする定期建物賃貸借契約を締結しようとするときは、成年後見人は賃貸人本人を代理して賃貸借契約を締結することができます。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ④
賃貸人の後見開始の審判がなされたときは、成年後見人は、その審判を理由として、存続中の賃貸借契約を取り消すことができる。
×不適切です
成年被後見人が行った法律行為は、成年後見人が取り消すことができます。
ただし、後見開始前に結んだ契約については、成年後見人であることを理由に取り消すことはできません。
つまり、賃貸人の後見開始の審判がなされたときは、成年後見人は、その審判を理由として、存続中の賃貸借契約を取り消すことはできません。よってこの選択肢は不適切です。
以上から、正解は選択肢①となります。
