今日は、賃貸不動産経営管理士試験 令和2年度 第43問について解説します。
相続税及び贈与税に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
① 借地権割合70%、借家権割合30%の地域にある土地上に賃貸不動産を建設し、賃貸割合を100%とすると、更地の場合と比べて土地の評価額を21%軽減できる。
② 被相続人と同一生計親族が居住していた自宅の敷地に小規模宅地等の特例を適用する場合には、200㎡までの部分について評価額を50%減額することができる。
③ 贈与税は、暦年課税の場合、1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与を受けた財産の価格から基礎控除額の110万円を控除した額に税率を乗じて計算する。
④ 贈与に関し、相続時精算課税制度を選択すると、選択をした贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降すべて同制度が適用され、暦年課税へ変更することはできない。
解説
相続税・贈与税に関する問題です。
それではさっそく選択肢をみていきましょう。
選択肢 ①
借地権割合70%、借家権割合30%の地域にある土地上に賃貸不動産を建設し、賃貸割合を100%とすると、更地の場合と比べて土地の評価額を21%軽減できる。
〇適切です。
「賃貸不動産を建設」とありますので、この土地は貸家建付地として評価することになります。
貸家建付地の評価額は、次の式で求めます。
自用地(更地)の評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
これを選択肢の数値で計算すると、
自用地の評価額 ×(1 − 0.7 × 0.3 × 1)
= 自用地の評価額 ×(1 − 0.21)
= 自用地の79%
つまり 21%分の評価減(軽減) が生じます。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
選択肢 ②
被相続人と同一生計親族が居住していた自宅の敷地に小規模宅地等の特例を適用する場合には、200㎡までの部分について評価額を50%減額することができる。
×不適切です。
被相続人と同一生計親族が居住していた宅地は 特定居住用宅地等 に該当します。
この場合、小規模宅地等の特例を適用すると、330㎡までの部分について評価額を80%減額することができます。
つまり、被相続人と同一生計親族が居住していた自宅の敷地に小規模宅地等の特例を適用する場合には、330㎡までの部分について評価額を80%減額することができます。よってこの選択肢は不適切です。
なお、「200㎡までの部分について評価額を50%減額する」というのは、
アパートなどの貸付事業用宅地等に適用される小規模宅地等の特例の内容です。
選択肢 ③
贈与税は、暦年課税の場合、1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与を受けた財産の価格から基礎控除額の110万円を控除した額に税率を乗じて計算する。
〇適切です。
贈与税の暦年課税制度では、年間110万円の基礎控除 が設けられており、その年(1月1日~12月31日)に受けた贈与の合計額が110万円以内であれば、贈与税はかかりません。
110万円を超える部分について、贈与税の税率を適用して計算します。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
選択肢 ④
贈与に関し、相続時精算課税制度を選択すると、選択をした贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降すべて同制度が適用され、暦年課税へ変更することはできない。
〇適切です。
暦年課税制度(110万円控除)のほかに、相続時精算課税制度を選択することができます。
この制度を利用すると、基礎控除後の額が2,500万円までは贈与税がかからず、超えた部分については一律20%の贈与税が課税されます。
なお、いったんこの制度を選択すると、その後は原則として、暦年課税制度を利用することはできなくなります。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
以上から、正解は選択肢②となります。
