今日は、賃貸不動産経営管理士試験 令和2年度 第44問について解説します。
不動産所得に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
① 不動産の貸付けを事業的規模で行っている場合、当該貸付けによる所得は不動産所得ではなく、事業所得として課税されることになる。
② 不動産所得の計算において、個人の場合、減価償却の方法は定額法を原則とするが、減価償却資産の償却方法の届出書を提出すれば、すべての減価償却資産につき、定率法によることも認められる。
③ 青色申告者の不動産所得が赤字になり、損益通算をしても純損失が生じたときは、翌年以降も青色申告者であることを条件として、翌年以後3年間にわたり、純損失の繰越控除が認められる。
④ 事業用資産の修理等のための支出が修繕費か資本的支出か明らかでない場合、その金額が60万円未満であるときか、その金額が修理等をした資産の前年末取得価額のおおむね10%相当額以下であるときのいずれかに該当すれば、修繕費と認められる。
解説
不動産所得に関する問題です。
それではさっそく選択肢をみていきましょう。
選択肢 ①
不動産の貸付けを事業的規模で行っている場合、当該貸付けによる所得は不動産所得ではなく、事業所得として課税されることになる。
×不適切です。
所得は、その性質によって給与所得、事業所得、山林所得などに分類され、それぞれ収入や必要経費の範囲、所得の計算方法などが定められています。
賃貸不動産経営による収入は、不動産所得として取り扱われます。
事業的規模(貸し付ける家屋がおおむね5棟以上またはアパートなどの場合おおむね10室以上であることを目安とする)かどうかは関係ありません。
つまり、不動産の貸付けを行っている場合、その規模にはかかわらず不動産所得として課税されることになります。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ②
不動産所得の計算において、個人の場合、減価償却の方法は定額法を原則とするが、減価償却資産の償却方法の届出書を提出すれば、すべての減価償却資産につき、定率法によることも認められる。
×不適切です。
個人の場合、原則として定額法により減価償却費を計算しますが、
「減価償却資産の償却方法の届出書」を確定申告期限までに税務署に提出すれば、定率法を採用することも認められています。
ただし、「すべての減価償却資産」について定率法が認められるわけではなく、一部の資産(工具器具備品等)に限られます。
※1998年4月1日以後に取得した建物と、2016年4月1日以後に取得した建築付属設備・構築物については定額法で計算しなければなりません。
つまり、不動産所得の計算において、個人の場合、減価償却の方法は定額法を原則とするが、減価償却資産の償却方法の届出書を提出すれば、一部の減価償却資産につき、定率法によることも認められます。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ③
青色申告者の不動産所得が赤字になり、損益通算をしても純損失が生じたときは、翌年以降も青色申告者であることを条件として、翌年以後3年間にわたり、純損失の繰越控除が認められる。
×不適切です。
不動産所得が赤字になり、純損失が生じた場合には、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除することができます。
なお、この制度は翌年以降も青色申告者であることを条件としているわけではありません。
つまり、青色申告者の不動産所得が赤字になり、損益通算をしても純損失が生じたときは、翌年以後3年間にわたり、純損失の繰越控除が認められます。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ④
事業用資産の修理等のための支出が修繕費か資本的支出か明らかでない場合、その金額が60万円未満であるときか、その金額が修理等をした資産の前年末取得価額のおおむね10%相当額以下であるときのいずれかに該当すれば、修繕費と認められる。
〇適切です。
修理等のための支出については、税法上「修繕費」と「資本的支出」に区別されます。
維持管理や原状回復のためのものは修繕費となり、資産の価値を高めたり、使用可能期間を延長させるような支出は資本的支出として取り扱われます。
また、修繕費か資本的支出どちらに該当するか明らかでない場合は、その金額が60万円未満場合、またはその金額が修理等をした資産の前年末取得価額のおおむね10%相当額以下である場合には、修繕費として扱うことが認められます。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
なお、金額が20万円未満の場合は、支出の区別にかかわらず修繕費として扱うことが認められます。こちらもあわせて押さえておきたいですね。
以上から、正解は選択肢④となります。
