今日は、平成29年度 第17問について解説します。
賃貸建物の修繕に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
① 借主は、賃貸建物について雨漏りの修繕費用を支出したときは、貸主に対し、賃貸借契約終了時に賃貸建物の価格の増加が現存する場合に限り、支出した費用又は増加額の償還を請求することができる。
② 貸主の過失によって発生した火災の結果、賃貸建物が全部滅失した場合には、貸主は賃貸建物の修繕義務を負う。
③ 賃貸建物が損傷した場合において、その原因が天変地異等、不可抗力によるものであるときは、貸主は賃貸建物を修繕する義務を負わない。
④ 貸主が修繕義務の履行を怠り、借主が賃貸建物を全く使用することができなかった場合には、借主はその期間の賃料の支払を免れる。
解説
修繕義務に関する問題です。
それではさっそく選択肢を確認しましょう。
選択肢 ①
借主は、賃貸建物について雨漏りの修繕費用を支出したときは、貸主に対し、賃貸借契約終了時に賃貸建物の価格の増加が現存する場合に限り、支出した費用又は増加額の償還を請求することができる。
×不適切です
雨漏りの修繕費用は、建物を現状のまま適切に使用・維持するために必要な費用(必要費)であり、本来は貸主が負担すべきものです。
そのため、借主が必要費を支出した場合には、貸主に対して直ちに償還を請求することができます。これを必要費償還請求権といいます。
つまり、借主は、賃貸建物について雨漏りの修繕費用を支出したときは、貸主に対し、直ちに償還を請求することができます。よってこの選択肢は不適切です。
ちなみに、貸主に対し、賃貸借契約終了時に賃貸建物の価格の増加が現存する場合に限り、支出した費用または増加額の償還を請求することができるのは、借主が有益費を支出した場合です。
選択肢 ②
貸主の過失によって発生した火災の結果、賃貸建物が全部滅失した場合には、貸主は賃貸建物の修繕義務を負う。
×不適切です
建物が天災や火災などにより全部滅失した場合には、履行不能となるため、賃貸借契約は当然に終了します。
この場合、契約当事者のいずれかに責任がある場合であっても、契約は終了します。
つまり、貸主の過失によって発生した火災の結果、賃貸建物が全部滅失した場合には、賃貸借契約は終了します(修繕義務が生じるわけではありません)。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ③
賃貸建物が損傷した場合において、その原因が天変地異等、不可抗力によるものであるときは、貸主は賃貸建物を修繕する義務を負わない。
×不適切です
貸主の修繕義務の対象となるのは、地震などの不可抗力による損傷も含まれます。
つまり、賃貸建物が損傷した場合において、その原因が天変地異等、不可抗力によるものであるときは、貸主は賃貸建物を修繕する義務を負います。よってこの選択肢は不適切です。
ただし、修繕が物理的または経済的に不可能な場合や、使用や収益に支障がない程度の破損については、貸主に修繕義務は生じないこともあわせて押さえておきましょう。
選択肢 ④
貸主が修繕義務の履行を怠り、借主が賃貸建物を全く使用することができなかった場合には、借主はその期間の賃料の支払を免れる。
〇適切です。
選択肢の説明の通り、貸主が修繕義務の履行を怠り、借主が賃貸建物を全く使用することができなかった場合には、借主はその期間の賃料の支払を免れますので、この選択肢は適切です。
以上から、正解は選択肢④となります。
ぜひ関連解説もあわせて理解を深めていただければと思います。
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