今日は、平成29年度 第19問について解説します。
契約書の記載に関する次の記述のうち、適切なものの組合せはどれか。なお、当事者間に契約書以外の合意事項はないものとする。
ア 賃貸借に関する保証契約書に保証債務の範囲として「賃貸借契約から生じる借主の債務」と記載されている場合、保証人は賃料についてのみ保証債務を負い、原状回復義務については保証債務を負わない。
イ 賃貸借契約書に賃料の支払日について記載がない場合、原則として毎月の賃料は当月末に後払いとなる。
ウ 賃貸借契約書に無断転貸を禁止する旨の記載がない場合、借主が貸主の承諾なく第三者に賃貸物件を転貸したとしても、貸主は賃貸借契約を解除することはできない。
エ 賃貸借契約書に借主の原状回復義務に関する記載がない場合であっても、賃貸物件が借主の過失により損傷したときは、貸主は借主に対して原状回復費用相当額の損害賠償を請求することができる。
1 ア、ウ
2 イ、ウ
3 イ、エ
4 ウ、エ
解説
賃貸借契約における義務などに関する問題です。
それではさっそく選択肢を確認しましょう。
選択肢 ア
賃貸借に関する保証契約書に保証債務の範囲として「賃貸借契約から生じる借主の債務」と記載されている場合、保証人は賃料についてのみ保証債務を負い、原状回復義務については保証債務を負わない。
×不適切です
保証人が負担する債務は保証債務と呼ばれます。
保証債務の範囲は、主たる債務のほか、利息、違約金、損害賠償などの従たる債務も含まれ、原状回復義務についても保証債務を負うことになります。
つまり、賃貸借に関する保証契約書に保証債務の範囲として「賃貸借契約から生じる借主の債務」と記載されている場合、保証人は賃料だけではなく従たる債務も含まれ、原状回復義務についても保証債務を負います。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 イ
賃貸借契約書に賃料の支払日について記載がない場合、原則として毎月の賃料は当月末に後払いとなる。
〇適切です。
賃料の支払時期について、民法では支払時期を特に定めなかった場合、毎月の賃料は当月末に後払いするのが原則とされています。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
選択肢 ウ
賃貸借契約書に無断転貸を禁止する旨の記載がない場合、借主が貸主の承諾なく第三者に賃貸物件を転貸したとしても、貸主は賃貸借契約を解除することはできない。
×不適切です
転貸は、貸主の承諾がなければ認められません。貸主の承諾なく転貸が行われた場合は、解除事由となります。
つまり、賃貸借契約書に無断転貸を禁止する旨の記載がない場合でも、借主が貸主の承諾なく第三者に賃貸物件を転貸したときは、貸主は賃貸借契約を解除することができます。よってこの選択肢は不適切です。
ただし、無断転貸であっても、貸主に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときには、貸主は契約を解除することができないとされていることもあわせて押さえておくと良いでしょう。
選択肢 エ
賃貸借契約書に借主の原状回復義務に関する記載がない場合であっても、賃貸物件が借主の過失により損傷したときは、貸主は借主に対して原状回復費用相当額の損害賠償を請求することができる。
〇適切です。
借主は、使用期間中に目的物に生じた損傷について、契約終了時に原状に回復して返還しなければなりません。これを原状回復義務といいます。
選択肢の説明の通り、賃貸借契約書に借主の原状回復義務に関する記載がない場合であっても、賃貸物件が借主の過失により損傷したときは、貸主は借主に対して原状回復費用相当額の損害賠償を請求することができますので、この選択肢は適切です。
以上から、適切な選択肢の組合せはイ、エですので、正解は選択肢③となります。