今日は、平成29年度 第21問について解説します。
賃料改定に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
① 借地借家法上の賃料増減額請求権を行使した場合において、相手方がこれを争うときは、調停を申し立てなければならない。
② 定期建物賃貸借契約においては、あらかじめ賃料改定方法を定めていた場合であっても、借地借家法上の賃料増減額請求の規定の適用は排除されない。
③ 賃貸借契約において「賃料の減額はしない。」との特約がある場合、借主は賃料の減額を求めることができない。
④ 管理業者は、賃料改定に影響を及ぼす各種要因の変化のうち、有利な変化が生じた場合には、賃貸条件を変更すべきかについて直ちに検討しなければならない。
解説
賃料改定に関する問題です。
それではさっそく選択肢を確認しましょう。
選択肢 ①
借地借家法上の賃料増減額請求権を行使した場合において、相手方がこれを争うときは、調停を申し立てなければならない。
〇適切です。
賃料増減請求は、相手方に通知(口頭でも可)することにより行います。
通知後に当事者間で合意に至らなければ、裁判手続きを行うことになりますが、訴えの提起の前に、調停の申立てを行う必要があります(調停前置主義)。
そして、調停でも合意が成立しない場合には、最終的に裁判所の判断によって賃料が決定されることになります。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
選択肢 ②
定期建物賃貸借契約においては、あらかじめ賃料改定方法を定めていた場合であっても、借地借家法上の賃料増減額請求の規定の適用は排除されない。
×不適切です
借地借家法第32条(賃料増減額請求)では、一定期間賃料を増額しない旨の特約は有効とされる一方で、減額しない旨の特約は無効とされることが規定されています。
一方、定期建物賃貸借契約においては、この規定は適用されず、増額しない特約・減額しない特約のいずれも有効とされます。
つまり、定期建物賃貸借契約においては、あらかじめ賃料改定方法(増減額請求権を排除する賃料改定特約)を定めていた場合であれば、借地借家法上の賃料増減額請求の規定の適用が排除されます。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ③
賃貸借契約において「賃料の減額はしない。」との特約がある場合、借主は賃料の減額を求めることができない。
×不適切です
普通建物賃貸借契約では、賃料を増額しない特約は有効とされる一方で、賃料を減額しない特約については、借主保護の観点から無効とされています。
つまり、賃貸借契約において「賃料の減額はしない。」との特約がある場合でも、普通建物賃貸借契約の場合、借主は賃料の減額を求めることができます。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ④
管理業者は、賃料改定に影響を及ぼす各種要因の変化のうち、有利な変化が生じた場合には、賃貸条件を変更すべきかについて直ちに検討しなければならない。
×不適切です
管理業者は、賃料改定に影響を及ぼす各種要因の変化に常に気を配り、変化が生じた際には、賃貸条件を変更すべきかどうか検討する必要があります。
ただし、「有利な変化」があった場合に直ちに賃貸条件の変更を検討しなければならない、という考え方は適切ではありません。
実務上は、むしろ「不利な変化」が生じたときのほうが、借主の退去や入居率の低下につながる可能性があるため、早急な対応が求められることが多いです。
たとえば、周辺家賃相場の下落、経済情勢の悪化、物件の競争力低下などは、賃貸条件を見直す必要性が高い要因となります。
つまり、管理業者は、賃料改定に影響を及ぼす各種要因の変化が生じた場合には、賃貸条件を変更すべきかについて検討しなければなりません(特に不利な変化が生じた際には迅速な対応が必要です)。よってこの選択肢は不適切です。
以上から、正解は選択肢①となります。