今日は、平成29年度 第8問について解説します。
サブリース方式による賃貸管理に関する次の記述のうち、適切なものはいくつあるか。
ア サブリース方式による賃貸管理は、転借人(入居者)に賃貸不動産を引き渡すことが契約成立の要件である。
イ 転借人(入居者)は、所有者(原賃貸人)との関係で転貸人(管理業者)の履行補助者には該当しないため、転借人(入居者)が過失に基づき賃貸不動産を毀損しても、転貸人(管理業者)は所有者(原賃貸人)に対して責任を負わない。
ウ 転借人(入居者)は、所有者(原賃貸人)に対して原賃貸借契約で定めた賃料の額までの範囲内で賃料支払義務を負う。
エ 原賃貸借契約が終了した場合に、所有者(原賃貸人)が転貸借契約を承継する旨の特約は有効である。
1 1つ
2 2つ
3 3つ
4 4つ
解説
サブリース(転貸借)に関する問題です。
それではさっそく選択肢を確認しましょう。
選択肢 ア
サブリース方式による賃貸管理は、転借人(入居者)に賃貸不動産を引き渡すことが契約成立の要件である。
×不適切です
サブリース方式による賃貸管理に係る契約とは、一般的に以下の3つの契約関係を指すと考えられます。
①建物所有者である貸主(原賃貸人)と借主(原賃借人)との間の賃貸借契約(原賃貸借契約)
②借主(転貸人)と転借人との間の賃貸借契約(転貸借契約)
③賃貸住宅の管理を委託する貸主と賃貸住宅管理業者との間で締結される管理受託契約
いずれの契約も、当事者の意思表示の合致(合意)によって成立するものであり、引渡しは契約成立の要件とはされていません。
つまり、サブリース方式による賃貸管理は、当事者の意思表示の合致が契約成立の要件です。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 イ
転借人(入居者)は、所有者(原賃貸人)との関係で転貸人(管理業者)の履行補助者には該当しないため、転借人(入居者)が過失に基づき賃貸不動産を毀損しても、転貸人(管理業者)は所有者(原賃貸人)に対して責任を負わない。
×不適切です
転借人は、転貸人の履行補助者とみなされるため、転借人の故意や過失によって物件を毀損した場合、転貸人は所有者に対して責任を負うことになります。
つまり、転借人(入居者)は、所有者(原賃貸人)との関係で転貸人(管理業者)の履行補助者に該当するため、転借人(入居者)が過失に基づき賃貸不動産を毀損しても、転貸人(管理業者)は所有者(原賃貸人)に対して責任を負います。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ウ
転借人(入居者)は、所有者(原賃貸人)に対して原賃貸借契約で定めた賃料の額までの範囲内で賃料支払義務を負う。
×不適切です
所有者が転借人に対して請求できるのは、転貸人の債務の範囲に限られており、具体的には、原賃貸借契約における賃料と、転貸借契約における転借料のいずれか低い方の金額までとなります。
つまり、転借人(入居者)は、所有者(原賃貸人)に対して転貸人の債務の範囲内(原賃貸借契約における賃料と、転貸借契約における転借料のいずれか低い方)で賃料支払義務を負います。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 エ
原賃貸借契約が終了した場合に、所有者(原賃貸人)が転貸借契約を承継する旨の特約は有効である。
〇適切です。
選択肢の説明の通り、原賃貸借契約が終了した場合、原賃貸人が転貸借契約の地位を承継するという特約を定めることができますので、この選択肢は適切です。
以上から、適切な選択肢はエの1つですので、正解は選択肢④となります。