今日は、平成30年度 第12問について解説します。
定期建物賃貸借契約に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
ア 定期建物賃貸借契約の事前説明は、「更新がなく、期間の満了により契約が終了する」旨を口頭で説明すれば足り、別途、書面を交付、または電磁的方法で提供する必要はない。
イ 定期建物賃貸借契約書に「契約の締結に先立って説明を受けた」旨の記載がない場合には、事前説明書を交付、または電磁的方法により提供して説明を行っていたとしても、定期建物賃貸借契約としての効力を有しない。
ウ 契約期間を1年未満とする定期建物賃貸借契約も有効である。
エ 賃貸借の媒介業者が宅地建物取引業法による重要事項説明書に基づき、「更新がなく、期間の満了により契約が終了する」旨の説明を行ったので、貸主による事前説明を省略した場合、定期建物賃貸借契約としての効力を有しない。
1 ア、イ
2 ア、エ
3 イ、ウ
4 ウ、エ
解説
定期建物賃貸借契約に関する問題です。
それではさっそく選択肢を確認しましょう。
選択肢 ア
定期建物賃貸借契約の事前説明は、「更新がなく、期間の満了により契約が終了する」旨を口頭で説明すれば足り、別途、書面を交付、または電磁的方法で提供する必要はない。
×不適切です
定期建物賃貸借を有効に成立させるためには、契約締結前に、契約の更新がなく期間の満了により終了することについて、あらかじめ借主に説明することが必要です。
この事前説明は、契約書とは別の独立した書面で行う必要があり、書面の交付や説明がなされていなかった場合には、定期建物賃貸借としての効力は認められず、普通建物賃貸借契約として扱われます。なお、この事前説明書は電磁的記録によって提供することも認められています。
つまり、定期建物賃貸借契約の事前説明は、「更新がなく、期間の満了により契約が終了する」旨を口頭で説明するとともに、書面を交付、または電磁的方法で提供する必要があります。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 イ
定期建物賃貸借契約書に「契約の締結に先立って説明を受けた」旨の記載がない場合には、事前説明書を交付、または電磁的方法により提供して説明を行っていたとしても、定期建物賃貸借契約としての効力を有しない。
×不適切です
定期建物賃貸借契約を有効に成立させるためには、書面等によって契約すること、更新がないことについて事前説明を行うこと、更新否定条項を設けて更新がないことの合意をすること、契約期間を定めること、が必要です。
定期建物賃貸借契約書に「契約の締結に先立って説明を受けた」旨の記載が必要であるという規定は存在せず、定期建物賃貸借契約書に記載する必要があるのは、更新否定条項です。
つまり、定期建物賃貸借契約書に「更新がないこととする」旨の記載(更新否定条項)がない場合には、事前説明書を交付、または電磁的方法により提供して説明を行っていたとしても、定期建物賃貸借契約としての効力を有しません。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ウ
契約期間を1年未満とする定期建物賃貸借契約も有効である。
〇適切です。
定期建物賃貸借の場合、契約期間の上限も下限も設けられていないため、1年未満の契約期間も有効とされています。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
選択肢 エ
賃貸借の媒介業者が宅地建物取引業法による重要事項説明書に基づき、「更新がなく、期間の満了により契約が終了する」旨の説明を行ったので、貸主による事前説明を省略した場合、定期建物賃貸借契約としての効力を有しない。
〇適切です。
事前説明は宅地建物取引業法に基づく重要事項説明とは別に行う必要があります。
選択肢の説明の通り、賃貸借の媒介業者が宅地建物取引業法による重要事項説明書に基づき、「更新がなく、期間の満了により契約が終了する」旨の説明を行ったとしても、貸主による事前説明を省略することはできず、もし省略した場合、定期建物賃貸借契約としての効力を有しませんので、この選択肢は適切です。
ただし、重要事項説明書に更新がない旨など必要な事項が記載されており、かつ、貸主から代理権を授与された宅地建物取引士が説明を行った場合には、事前説明書の交付および事前説明を兼ねることができるとされていることも、あわせて押さえておきましょう。
以上から、適切な選択肢の組合せはウ、エですので、正解は選択肢④となります。
※法改正に伴い、選択肢ア、イを改題しております。(「電磁的記録」の表現を加えるなどの一部改題を行っております。)