今日は、平成30年度 第23問について解説します。
賃貸借契約の解除に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
① 賃料の滞納が一度でもあれば、滞納自体が債務不履行に該当し、契約当事者の信頼関係を破壊するため、滞納理由について調査する必要はない。
② 賃料滞納を理由として賃貸借契約を解除する場合、配達証明付き内容証明郵便を用いて催告を行うと、催告を行ったことについて裁判上の証拠となる。
③ 賃料滞納を理由として賃貸借契約を解除する場合、催告と解除の意思表示は別個の書面で行わなければ、解除の効果が生じない。
④ 借主が長期にわたり行方不明となっている場合、すでに賃貸建物を占有しているとは言えないため、賃貸借契約の解除の意思表示をしなくても、契約は終了する。
解説
賃貸借契約の解除に関する問題です。
それではさっそく選択肢を確認しましょう。
選択肢 ①
賃料の滞納が一度でもあれば、滞納自体が債務不履行に該当し、契約当事者の信頼関係を破壊するため、滞納理由について調査する必要はない。
×不適切です。
借主が賃料の支払いを怠った場合、貸主は契約の解除を行うことができます。
ただし、契約解除が認められるかどうかは、不払いの金額・程度、過去の支払い状況、支払催促への対応などを総合的に判断し、貸主と借主との信頼関係が破壊されたかどうかによって決まります。
そのため、一般的には賃料不払が一度あっただけでは、信頼関係が破壊されたとは評価されにくく、2か月から3か月分の不払いが継続しているような場合に、信頼関係の破壊が認められることがあります。
つまり、賃料の滞納が一度でもあれば、滞納自体が債務不履行に該当しますが、契約当事者の信頼関係を破壊するとまでは評価されにくく、総合的に判断されます。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ②
賃料滞納を理由として賃貸借契約を解除する場合、配達証明付き内容証明郵便を用いて催告を行うと、催告を行ったことについて裁判上の証拠となる。
〇適切です。
賃料滞納を理由として契約を解除するためには、賃料の支払期日を過ぎていること、相当な期間を定めた催告を行っていること、契約解除の意思表示をしていることが必要です。
催告の方法および解除の意思表示の方法には法律上の制限はなく、口頭でも有効とされますが、後日の証拠とするため、配達証明付き内容証明郵便によって行うのが一般的です。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
選択肢 ③
賃料滞納を理由として賃貸借契約を解除する場合、催告と解除の意思表示は別個の書面で行わなければ、解除の効果が生じない。
×不適切です。
催告の方法および解除の意思表示の方法には法律上の制限はなく、口頭でも有効とされますが、後日の証拠とするため、内容証明郵便などによる書面で行うことが一般的です。
なお、催告と解除の意思表示を同じ書面で行うことも可能です。
つまり、賃料滞納を理由として賃貸借契約を解除する場合、催告と解除の意思表示は同じ書面で行っても、解除の効果が生じます(書面によると限られているわけではありません)。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ④
借主が長期にわたり行方不明となっている場合、すでに賃貸建物を占有しているとは言えないため、賃貸借契約の解除の意思表示をしなくても、契約は終了する。
×不適切です。
借主が長期間行方不明であっても、賃貸借契約は当然に終了するわけではありません。
解除するには、契約解除の意思表示が必要です。
借主が長期にわたり行方不明となっている場合であっても、賃貸借契約の解除の意思表示をして、契約解除の手続きを行わなければ、契約が当然に終了するわけではありません。よってこの選択肢は不適切です。
以上から、正解は選択肢②となります。