【過去問解説(企業経営理論)】H29第31問 製品戦略

今回は企業経営理論の製品戦略についてです。

設問が3つと少々ボリュームが多いですが、めげずにお付き合いください。

 

H29 企業経営理論 第31問

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
長年にわたり、羽毛布団の製造小売を行ってきた Y 社は、近年、拡大を続ける全国チェーンのインテリア専門店に羽毛布団の顧客を奪われてしまったため、新社長の P 氏は羽毛を原材料とした新製品の開発を通じて、新たな顧客を創造するという構想を練り始めている。所有する生産設備もうまく活用する形での新製品開発に向け、 P 氏は中小企業診断士である Q 氏から基本的な①製品開発のプロセスについてアドバイスを受けている。
その結果、いくつかの②コンセプト案がリストアップされた。ここから一年間を費やしてそれらからいくつかの製品を市場投入段階まで到達させることを念頭に置いて、 P 氏はそのための準備に取り組んでいる。 P 氏は、まず③市場動向を把握し、競合となりうる製品・企業を特定するための作業に着手している。

 

(設問1)
文中の下線部①に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 近年では、有体の製品とそれらの使用価値を高めるための無体財を組み合わせて提供し、顧客の囲い込みを図る、レッドオーシャン戦略と呼ばれるアプローチが顕著になっている。
イ 新製品を開発する際には、製品系列のラインの幅と奥行きの全体的な構成のバランスを保つ必要がある。そのための一連の分析をクロスセル分析という。
ウ 幅が広く、奥行きも深い製品系列を有する消費財メーカーは、それを経営資源として活用し、流通業者から有利な取引条件を引き出せる可能性をもっている。
エ マーケティング指向の立場をとる企業は、いわゆるシーズ(seeds)を出発点とした新製品・新サービスの開発は行わない。

 

(設問2)
文中の下線部②に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 新製品のコンセプト開発においては、既存顧客や顕在顧客に対象を絞り、その中での市場セグメンテーションを行うことが重要である。
イ 新製品のコンセプト策定に当たっては、組織内部の部門間での伝わりやすさを第一とし、顧客を含む、企業の外部に対する分かりやすさは事後的に検討される。
ウ 製品コンセプトとは、ある製品が顧客に提供しうる価値を端的に示すものである。それによって、買い手が製品やサービスを購買したいと思うようになる。
エ 製品コンセプトの開発に先駆けて探索的調査が実施されることが多いが、観察法はその段階で有用でないとされている。

 

(設問3)
文中の下線部③に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア PEST 分析は、組織の外部環境を捉えるための方法である。これは、政治的環境、企業文化的環境、社会的環境、技術的環境という4つの側面から外部環境を把握することを支援する。
イ SWOT 分析は、組織の内部環境の把握に限定した方法であるが、自社の強みと弱み、機会と脅威のそれぞれを構成する要素を整理するために有用である。
ウ 相対的市場シェアとは、最大の競争相手の市場シェアで自社の市場シェアを割る(除する)ことで算出される数値である。この値が 50 %を超えていれば、自社はその市場のリーダー企業である。
エ 有効市場とは、ある製品・サービスに対する十分な関心をもち、購買に必要な水準の収入を有しており、かつその製品・サービスにアクセスすることができる消費者の集合のことである。

 

 

冒頭の問題文長いですね。

でも、この手の長い問題文にも2つのタイプがあります。タイプとしては、

① プチ事例のようになっており、長い問題文をしっかりと読み込まないと回答できないタイプで、

② 個々の問題を解くのにあまり問題文は関係ないタイプ

があります。

 

①のタイプの問題はしっかり問題文を読み込まないといけないため、結構時間がとられてしまうため場合によっては後回しにするという作戦を取っても良い問題です。

それに対し②の問題は見た目は長くて大変そうに見えますが、結局使われるのは問題文中の下線の部分だけですので、長い問題文はさらっと流し読みして、個々の設問を考えればよいため、比較的取り組みやすい問題です。

 

①と②の見分け方は、わりとシンプルで、本文中に下線が引いてあるか、いないかで見分けることができます。

今回の問題の場合、下線が引いてある②のタイプの問題ですので、比較的取り組みやすいといえます。

 

それでは早速個別の問題を見ていきましょう。

(設問1)
製品開発についての問題です。

選択肢アはレッドオーシャン戦略というのが間違えですね。
レッドオーシャンとは「血の海」ということで競合が沢山いる中で血で血を争う戦いが繰り広げられている場のことなので、間違えだとすぐに判断できます。

選択肢イのクロスセルという言葉はワントゥーワンマーケティングのところで聞いたことがある用語かと思います。
クロスセルとは、例えば、ある製品Aを買ってくれた顧客に対し、顧客の過去の購買履歴を参考に、関連した別種の商品である製品aを勧める方法です。ちなみに製品Aよりも少し高いグレードの製品A+方法はアップセルといいます。
「製品系列のラインの幅と奥行きの全体的な構成のバランスを保つ」ための分析とはちょっと意味が違いそうなので×と判断できます。

選択肢ウは、ポーターの5フォースが思い起こされます。
売り手の商品が競争力が高いと売り手の交渉力は高くなるため、この選択肢は正しそうです。

選択肢エは、「新製品・新サービスの開発は行わない」ときっぱり断言してしまっています。確かにマーケティング指向の立場の企業は消費者のニーズを重視しますが、優れたシーズを持っていてそれが消費者のニーズに合致すれば、シーズを出発点とした製品開発を行う場合もあります。
このように断言系の選択肢は、誤りである場合が多いです。
他の科目も含めて、もし断言系の選択肢を見たら、内容が判断できなくてもとりあえず誤りでは、と考えてみても良いかもしれません。

以上から選択肢ウが正解となります。

 

(設問2)

コンセプトに関する設問です。

選択肢アは、「既存顧客や顕在顧客に対象を絞り」というのは恐らくターゲティングのことを言っていると思われます。
マーケティングはセグメンテーション→ターゲティング→ポジショニングの流れで行うものですので、順番が前後しています。そのため×ではないかと考えられます。

選択肢イは、「組織内部の部門間での伝わりやすさを第一とし、顧客を含む、企業の外部に対する分かりやすさは事後的に検討される」とありますが、顧客は後回しというのは企業経営理論を学んでいなくてもアウトだろう、と判断できますね。

選択肢ウは、特に間違っているところはなさそうです。

念のために選択肢エも見てみます。
選択肢エの観察法とは、マーケティングリサーチの方法で、調査対象者を直接観察することです。
そして探索的調査とはニーズを探るための調査のことですので、調査対象者を直接観察する観察法が有効じゃないというのは×だろう、と判断できます。

以上から、選択肢ウが正解となります。

 

(設問3)

市場動向を把握するための方法に関する問題です。

PESTのEはEconomic、経済的環境のEでしたね。
そのため選択肢アは×です。

SWOTは「組織の内部環境の把握に限定した方法」とありますが、機会や脅威には外部環境も含まれますので選択肢イは×です。

選択肢ウの前半の「相対的市場シェアとは、最大の競争相手の市場シェアで自社の市場シェアを割る(除する)ことで算出される数値である。」の文章は正しそうです。
でも、自社がリーダー企業であるならば、最大の競争相手のシェアは自社よりも小さいはずなので、相対的市場シェアの値は100%を超えるはずです。
そのため、この選択肢は誤りです。

ということは選択肢エは正しいと考えられます。
有効市場という言葉を知らなくても他の3つが誤りなので、消去法で選ぶことができます。

 

 

企業経営理論は90分と試験時間が長い科目ですが、問題文の分量も多く、意外と時間が足りなくなることがあります。

長文問題でも流し読みで良い問題は流し読みでさくっと片づけることで、少しでも時間を有効活用できるようにしましょう。

 

 

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