今日は、経営法務 R2 第5問 について解説します。
会社法が定める株式会社の合併に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 吸収合併消滅会社の吸収合併による解散は、吸収合併の登記がなされるまでは第三者に対抗することができない。
イ 吸収合併存続会社は、債権者異議手続が終了していない場合においても、合併契約に定めた効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。
ウ 吸収合併存続会社は、私法上の権利義務のほか、吸収合併消滅会社が有していた行政機関による許認可などの公法上の権利義務についても、その権利義務の種類を問わず、当然に、その全てを吸収合併消滅会社から引き継ぐ。
エ 吸収合併における合併の対価は、株式に限られ、金銭を対価とすることはできない。
解説
会社法の組織再編のうち、合併に関する問題です。
まとめシートでは、以下の通り解説しています。
それでは選択肢をみていきましょう。
選択肢ア:吸収合併消滅会社の吸収合併による解散は、吸収合併の登記がなされるまでは第三者に対抗することができない。
〇適切です。
合併による解散は、登記がなされて初めて第三者に対抗可能になります。これは会社法の基本的な原則で、合併の効力発生日は合併契約で定めることができますが、第三者への対抗力は登記があってこそ認められるという点がポイントです。
よって、この選択肢は〇です。
選択肢イ:吸収合併存続会社は、債権者異議手続が終了していない場合においても、合併契約に定めた効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。
×不適切です。
債権者保護手続(異議申述期間満了や異議対応など)を経ずに合併の効力が発生することは認められていません。存続会社は、適法に手続きを終えたうえで権利義務を承継する必要があります。債権者の利益保護のためのこの手続きを無視して効力を生じさせることはできません。
よって、この選択肢は×です。
選択肢ウ:吸収合併存続会社は、私法上の権利義務のほか、吸収合併消滅会社が有していた行政機関による許認可などの公法上の権利義務についても、その権利義務の種類を問わず、当然に、その全てを吸収合併消滅会社から引き継ぐ。
×不適切です。
許認可などの公法上の権利義務は、必ずしも当然に承継されるわけではありません。例えば、特定の条件付き許可や人的要件を伴う許可(例:医師免許、酒類販売免許など)は、承継が認められないこともあります。承継には行政庁の承認が必要となるケースも多く、一律に「すべて引き継ぐ」とするのは誤りです。
よって、この選択肢は×です。
選択肢エ:吸収合併における合併の対価は、株式に限られ、金銭を対価とすることはできない。
×不適切です。
合併の対価としては、株式に限らず、金銭や社債なども認められています。会社法上、合併対価は柔軟に定めることができ、相手企業の株主に対して金銭等を交付することも可能です。したがって「株式に限られる」という記述は誤りです。
よって、この選択肢は×です。
以上から、正解は選択肢アとなります。
経営法務学習のポイント:横串を差して覚える🍡
会社法や産業財産権では、似たような複数の機関や法律が出てきます。
その際に、合併の場合、対価は~、債権者保護は~、許認可の引継ぎは~…というようにそれぞれを単品で覚えるのは大変で覚え間違いも発生します。そこで、まとめシートの表を参考に、例えば「債権者保護手続きについて、合併は必要、株式交換と株式移転は不要…」のように、ある観点から複数の法律を比較し(横串を刺し)ながら覚えるようにしましょう。その方が覚えやすく、試験でも対応しやすくなります。
また、より記憶を定着させるためには、なぜそのような制度になっているのか、根拠を自分なりに理由付けしながら覚えるようにすると良いでしょう。
詳しくは、Youtubeでご紹介していますので、是非チェックしてください🎥
資格試験】東大卒が語る!暗記のコツ①経営法務_中小企業診断士_ 第009回
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