【過去問解説(経営法務)】R7 第6問 設問1 会社分割と事業譲渡

今日は、R7 経営法務 第6問の設問1について解説します。

 R7 経営法務 第6問 設問1

以下の会話は、X株式会社の代表取締役甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話に基づき、下記の設問に答えよ。

甲氏:「先日ご相談した弊社のA事業部門の件ですが、Y社の社長から具体的に買収をしたいとの意向を伝えられました。Y社の拡大戦略において、A事業は重要なピースになると評価しているそうです。弊社としても、条件が合うのであれば、ぜひともこの話は進めたいと思っています。」
あなた 「よかったですね。どのような方法で譲渡するか、もう話をしているのですか。」
甲氏:「はい。Y社の社長からは、A事業部門を独立させた法人としてY社の子会社とする構想があるそうで、まずはY社本体で事業を譲り受けるか、それとも弊社側で会社分割により新会社を設立してその新会社の株式を譲り受けるか、どちらかの方法を検討しているとのことです。」
あなた: 「いずれの方法でも、事業部門を譲渡する目的は達成できそうですね。」
甲氏:「A事業部門では、古くからの取引先との契約がかなりあり、これらを移転させないといけないのですが、会社分割と事業譲渡とでは、契約関係の移転について効力にどのような違いがあるのでしょうか。弊社もY社も特別法の適用があるような事業は営んでいません。」
あなた:「 A 」
甲氏:「なるほど。債権者保護手続のことも気になっているのですが、両者に違いはあるのでしょうか。会社分割の方法による場合、新会社で免責的債務引受をしてもらって、弊社には債務を残さない予定にしています。」
あなた:「 B 」
甲氏:「そうなんですね。ところで、この話を進めるにあたってもう1つ頭が痛いことがあります。実は、弊社の大株主の1人が、もともとA事業部門の出身で、A事業部門の売却という話になると、かなり抵抗するのではないかと思います。」
あなた:「将来のことを考えて、納得してくれればよいのですけどね。」
甲氏:「前々から株式を買い取って欲しいということも伝えられています。会社分割と事業譲渡で、株主の株式買取請求権について違いはあるのでしょうか。資産規模からすると、簡易手続を利用することはできない見込みです。」
あなた:「 C 」
甲氏:「ご説明ありがとうございます。よく分かりました。」
あなた:「具体的に検討を進めるため、弁護士さんや税理士さんに相談してみましょう。」

(設問1)
会話の中の空欄AとBに入る記述の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。


A:会社分割の場合は、包括承継により、原則として財産や権利義務の包括的移転の効果が生じますが、事業譲渡の場合には、そのような効果は生じないので、個々の財産の移転手続や対抗要件の具備が個別に必要となり、契約の相手方の同意を得る必要があります
B: 会社分割の場合は債権者保護手続が必要となりますが、事業譲渡の場合は債権者保護手続は必要ありません。ただし、個別に債権者の同意を得る必要があります

A: 会社分割の場合は、包括承継により、原則として財産や権利義務の包括的移転の効果が生じますが、事業譲渡の場合には、そのような効果は生じないので、個々の財産の移転手続や対抗要件の具備が個別に必要とな り、契約の相手方の同意を得る必要があります
B: 会社分割の場合も事業譲渡の場合も、債権者保護手続が必要となります

A: 会社分割の場合も事業譲渡の場合も、包括承継により、原則として財産や権利義務の包括的移転の効果が生じますので、個別に契約の相手方の同意を得る必要はありません
B: 会社分割の場合も事業譲渡の場合も、債権者保護手続が必要となります

A: 会社分割の場合も事業譲渡の場合も、包括承継により、原則として財産や権利義務の包括的移転の効果が生じますので、個別に契約の相手方の同意を得る必要はありません
B: 会社分割の場合も事業譲渡の場合も、債権者保護手続は必要ありません

解説

会社分割と事業譲渡の違いに関する問題です。

まとめシートでは、以下の通り解説しています。

空欄AとBに入る記述について、それぞれ見ていきましょう。

空欄A:契約関係の移転について

会社分割は、会社法上の組織再編行為です。事業に関する権利義務は、新会社に包括的に承継されます。そのため、取引先との契約関係も個別の同意を得ることなく、原則として自動的に新会社に移転します。

事業譲渡は、会社法上の組織再編行為ではなく、事業という財産の売買契約にあたります 。そのため、権利義務は包括的に承継されず、取引先との契約関係を移転させるには、個別に取引先の同意を得る必要があります 。

したがって、空欄Aには「会社分割は包括承継であり、事業譲渡は個別の同意が必要」という趣旨の内容が入ります。

空欄B:債権者保護手続について

会社分割では、債務が新会社に移転し、元の会社(X社)がその債務を免れる(免責的債務引受)場合、元の会社の債権者の利益を害する可能性があるため、債権者保護手続が必要となります 。

事業譲渡は、あくまで事業という資産の売買であり、会社の組織自体に変更はないため、原則として会社法上の債権者保護手続は不要です 。

したがって、空欄Bには「会社分割では債権者保護手続が必要だが、事業譲渡では不要」という趣旨の内容が入ります。

 

それでは選択肢をみていきましょう。

選択肢ア:
→ ✅ 正しいです。
空欄A、Bともに上記の説明と一致しています。
よって、この選択肢は〇です。

選択肢イ:
→ ❌ 誤りです。
空欄Aの記述は正しいですが、Bの記述が「事業譲渡の場合も、債権者保護手続が必要」となっている点が誤りです。
よって、この選択肢は×です。
選択肢ウ:
→ ❌ 誤りです。
空欄Aの記述が「事業譲渡の場合も、包括承継により」となっている点が誤りです。また、Bの記述も誤っています。
よって、この選択肢は×です。
選択肢エ:
→ ❌ 誤りです。
空欄Aの記述が「事業譲渡の場合も、包括承継により」となっている点が誤りです。また、Bの記述も誤っています。
よって、この選択肢は×です。

✅ 以上から、正解は選択肢アとなります。

 

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