今日は、R7 経営法務 第15問について解説します。
以下の会話は、メーカーであるX株式会社(以下「X社」という。)の広報部長の甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話の中の空欄AとBに入る記述の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
なお、著作権法第27条および第28条の規定は次のとおりである。
第27条 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
第28条 二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。
甲 氏:「弊社のパンフレットに載せるイラストをイラストレーターにお願いしようと思っています。
そこでお伺いしたいのですが、イラストレーターには対価をお支払いするので、「対価の完済により、イラストという著作物の著作権はX社に移転する」と定めておけば、著作権はすべて弊社に移転すると考えてよろしいですね。」
あなた:「A。」
・・・中略・・・
甲 氏:「もう1 つ質問があります。弊社でイラストを手直しする可能性があるのですが、著作者人格権は移転できますか。」
あなた:「B。
・・・中略・・・
弁護士さんをご紹介しますので、詳しくはその方にお尋ねになってください。」
〔解答群〕
ア A:いいえ。著作権法第27条または第28条に規定する権利は、譲渡の目的として特掲しないと、これらの権利は譲渡した者に留保したものと推定されます
B:いいえ。著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができません
イ A:いいえ。著作権法第27条または第28条に規定する権利は、譲渡の目的として特掲しないと、これらの権利は譲渡した者に留保したものと推定されます
B:はい。著作者人格権を移転することはできます
ウ A:はい。おっしゃるとおりです。著作権はすべて対価を支払った者に自動的に移転します
B:いいえ。著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができません
エ A:はい。おっしゃるとおりです。著作権はすべて対価を支払った者に自動的に移転します
B:はい。著作者人格権を移転することはできます
解説
著作権の譲渡と、著作者人格権の性質に関する問題です。
それでは空欄をみていきましょう。
空欄Aについて
甲氏は「著作権はX社に移転する」と契約書に書けば、すべての著作権が移転すると考えています。しかし、著作権法には特則があります。
著作権法第61条2項では、著作権を譲渡する契約において、翻案権など(第27条) や 二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(第28条) を譲渡の対象として具体的に明記(特掲)しない限り、これらの権利は譲渡した者(この場合はイラストレーター)の手元に残った(留保された)ものと推定されます。
空欄Bについて
著作者人格権(公表権、氏名表示権、同一性保持権)は、著作者個人の人格的な利益を守るための権利です。そのため、著作者だけに一身専属する権利とされており、他人に譲渡したり、相続したりすることはできません(著作権法第59条)。したがって、イラストを手直しする可能性がある場合でも、著作者人格権はイラストレーターに残ります。
以上を踏まえ選択肢をみていきましょう。
→ ✅ 正しいです。
空欄A、Bともに上記の説明と一致しています。
よって、この選択肢は〇です。
→ ❌ 誤りです。
空欄Aの記述は正しいですが、Bの記述が「著作者人格権を移転することはできる」となっている点が誤りです。
よって、この選択肢は×です。
→ ❌ 誤りです。
空欄Bの記述は正しいですが、Aの記述が「著作権はすべて対価を支払った者に自動的に移転」するとなっている点が誤りです。
よって、この選択肢は×です。
→ ❌ 誤りです。
空欄A、Bともに誤りです。
よって、この選択肢は×です。
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