今回は外部組織との提携についての問題です。
外部組織との提携に関する知識は、2次試験でも問題を解く前提として知っておく必要があるものもありますので、2次試験を見据えて押さえておくと良いでしょう。
H29 企業経営理論 第4問
日本企業は戦略的にM&Aを活用するようになっているが、M&Aよりも戦略的提携を選択する企業も多い。M&Aには、契約成立前の準備段階と交渉段階、成立後の統合段階でのさまざまな留意点がある。
日本企業のM&Aと戦略的提携に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア M&Aの準備段階では、当事者の持つ研究開発、生産、販売などの重複部分や競合関係の明確化が重要であり、統合段階でデューデリジェンス(due diligence)を開始して機能統合していく。
イ 異業種のM&Aには、基本的には、規模の経済と取引交渉力の増大というメリットがあり、業績不振の立て直しはできないが、自社の必要としない資源までも獲得してしまう恐れはない。
ウ 企業の独立性を維持できる戦略的提携は、パートナーが提携関係を裏切る可能性を最小化しつつ、提携による協力から得られる恩恵を最大限享受することが主な目的であり、企業の評判に悪影響が起こる可能性は、戦略的提携における裏切りのインセンティブを抑制できない。
エ 戦略的提携の目的が経済的な価値と希少性の追求にあっても、持続的な競争優位をもたらすとは限らないが、提携による業界内の新しいセグメントへの低コストでの参入は企業間の強みを補完する試みとなりうる。
オ 同業種のM&Aには、基本的には、範囲の経済と習熟効果の実現というメリットがあり、組織文化の調整のコストは必要であるが、統合のコストはかからない。
それでは各選択肢を見ていきましょう。
選択肢アは、前半の文章は正しそうです。しかし、「統合段階でデューデリジェンス(due diligence)を開始して」とありますが、デューデリジェンスは統合する前にやるものですので×です。
選択肢イは、「自社の必要としない資源までも獲得してしまう恐れはない」と断言していますが、そんなことはなく、合併すると自社の必要としない資源を獲得してしまう恐れはあります。
このような断言系の選択肢は、×である可能性が大きいので、断言系の文章があった場合は警戒するようにしましょう。
さらに、規模の経済と取引交渉力の増大というメリットがあるのは、異業種というよりは同業種のM&Aのメリットです。
なので選択肢イは誤りです。
選択肢ウも「戦略的提携における裏切りのインセンティブを抑制できない」と断言してしまっていますが、そんなことはなく、パートナーが提携企業を裏切ったことによって「この企業は裏切り者だ」という悪評が立てば、その悪評は裏切った企業の後のビジネスに影響してしまう恐れがあるので、戦略的提携における裏切りのインセンティブを抑制することができます。
選択肢エは正しそうです。
選択肢オも「統合のコストはかからない」と断言していますが、M&Aをする以上何かしらの形で統合のコストは必要となりますので、統合のコストはかからないと断言してしまっているこの選択肢は×と言えます。
さらに、、範囲の経済と習熟効果の実現というメリットがあるのは、同業種というよりは異業種のM&Aのメリットです。
ちょうど、選択肢イとオで同業種と異業種という言葉が入れ替わっています。
なので選択肢オは誤りです。
以上から正解は選択肢エです。
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2件のフィードバック
素晴らしい!
コメントありがとうございます。解説がお役に立てればうれしく思います!