1次試験、お疲れ様でした。
私も、実際に今年の企業経営理論の問題を解いてみましたが、今年は、毎年のように出ていたドメインやPPMの問題の出題がなく、組織論のモチベーションや人的資源管理などでマニアックな問題が多くありました。
また、これは昨年もそうでしたが、覚えていれば解けるような問題が少なく、文章をしっかり読み込まないと解けない問題が多かったため、解く順番を含めた時間のマネジメントも重要となったのではと思いました。
なお、トータルの難易度的には、昨年と同程度くらいの印象を受けました。
今日から早速、今年の1次試験の過去問について解説していきたいと思います。
初回は第3問のVRIOについてです。第2問にも経営資源に関する問題が出ていますが、経営資源の少ない中小企業では、特にこの経営資源に着目するというのは非常に重要な視点です。
特に2次試験の事例Ⅱでは、助言を求められた際、B社の経営資源を踏まえた助言をしなければ、実現性が薄いアイディア解答となってしまう恐れがあります。
ですので、経営資源は何か?ということは2次(特に事例Ⅱ)の問題を解く際は常に意識しましょう。
H30 企業経営理論 第3問
企業の経営資源に基づく競争優位を考察するVRIOフレームワークにおける模倣困難性は、持続的競争優位を獲得するために必要な条件とされている。この模倣困難性に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア A社が、模倣対象のB社が保有する経営資源やケイパビリティと、B社の競争優位の関係を理解しているか否かは、A社がB社の模倣を行う時のコストに影響を与える要因にならない。
イ C社が、新規事業に必要不可欠な経営資源を、その将来における最大価値を下回るコストで入手した場合、競合会社D社が、C社より相当に高いコストでも同様の経営資源を獲得できる限り、C社の経営資源に模倣困難性はない。
ウ 最先端の機械Eを使いこなすために熟練技能者同士の協力関係が必要であり、かつ、熟練技能者同士の協力関係の構築に相当な時間とコストを必要とする場合、最先端の機械Eを所有しているだけでは、模倣困難性による持続的競争優位の源泉にはならない。
エ 相当な時間を要して獲得したF社のノウハウやネットワークが優れた製品を生み出すための重要な要素で希少性もあり、また競合会社が短期間で獲得するにはコスト上の不利が働くとしても、F社の模倣困難性を持つ経営資源にはなりえない。
問題文にあるとおり、VRIOのI、つまり、模倣困難性は、持続的な競争優位を獲得するために特に重要な要素で、マネをするためのコストがどれだけかかるかという観点です。
そして、まとめシートでもご説明しましたが、模倣困難性には、
①マネをするために時間がかかる、経路依存性
②マネの仕方がわからない、社会的複雑性
③どこをマネすればいいかわからない、因果関係の不明性
④法律的にマネできない、特許
があります。
(ちなみに第2問も「情報的経営資源」と書かれていますが、この模倣困難性の考え方に照らし合わせれば解ける問題です。)
では、それを踏まえて各選択肢を見ていきましょう。
選択肢アは、③の因果関係の不明性のことを言っていますね。しかし、それが「A社がB社の模倣を行う時のコストに影響を与える要因にならない」と言っています。ですので×と考えられます。
選択肢イは、模倣困難性そのもののことを言っています。「同様の経営資源を獲得できる」というちょっとポジティブな表現に引きずられると、「C社の経営資源に模倣困難性はない」と言われても、そうなのかな、と思ってしまいます。しかし、その前に「相当に高いコストで」とありますので、D社がC社をマネしようと思った場合、マネするために相当なコストがかかる、つまり、模倣困難性があるということになり、この選択肢は×と考えられます。
選択肢ウは、①の経路依存性のことを言っているので○と考えられます。
念のため、選択肢エも見てみると、これも①の経路依存性のことを言っていて、それが「模倣困難性を持つ経営資源にはなりえない」と言っているので×です。
以上から正解は選択肢ウです。
企業経営理論は、昨年の問題も今年の問題も単に知識があるだけでは解けず、それを踏まえてどうかという判断が入ってくる問題がほとんどですので、来年の受験を目指している方は、極力早い段階で過去問に触れ、過去問の問われ方や知識の展開の仕方に慣れていくようにしましょう。
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