【過去問解説(企業経営理論)】H25 第7問(設問1,2)  資源依存モデル

今日は企業経営理論H25第7問について解説します。

 

H25 企業経営理論 第7問(設問1,2)
完成品メーカーと部品メーカーの取引関係に関する次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
①完成品メーカーと部品メーカーとの取引関係は、両社が属する業界の競争状況や為替相場などの影響を受けながら複雑に変化している。完成品メーカーがこれまでの取引関係を見直して、新たな部品メーカーとの取引を検討したり、あるいは完成品メーカーが外部に発注していた部品を内製化することは頻繁に起こることである。このような取引関係の変化に対応して、②部品メーカーは完成品メーカーに対して様々な手を打つことになる。
(設問1)
文中の下線部①に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア ある部品の発注先を分散することによって、特定の部品メーカーから大量に調達する場合よりも、部品メーカー1社当たりの生産負担が軽減され、部品コストが低下する。
イ 外注する部品について発注先を多様化して競わせることによって、部品メーカーの忠誠心を高め、納入部品の価格を低く抑えることができる。
ウ 業界共通の汎用部品の場合、専門部品メーカー数社に発注を集約すれば、そのメーカーに独自能力が蓄積され、完成品メーカーの交渉力が低下する。
エ 重要な部品について、完成品メーカーが発注先の部品メーカーを増やせば、調達部品の発注明細の標準化や取引条件の単純化が進み、調達の管理コストが下がる。
オ 重要な部品については複数の会社に分散発注することで、部品メーカーの競争による品質の向上が期待でき、不測の事態による供給不足にも対応できる。
(設問2)
文中の下線部②に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 完成品メーカーからの受注量を拡大して、現行の技術に依拠した生産の範囲の経済を発揮して、完成品メーカーへの交渉力を高める。
イ 完成品メーカー向けの部品の特殊な生産設備への投資によって、部品の値下げ圧力や取引先の切り替えに対抗する。
ウ 系列部品メーカーの場合、自社の生産技術やノウハウをブラックボックス化して、完成品メーカーの製品開発に積極的に参加する機会を増やす。
エ 自社の特殊な生産設備による部品が完成品の性能・機能にとって不可欠な役割を果たす場合、その生産能力増強については完成品メーカーからの投資負担を求めることができる。
オ 部品メーカーは、自社の設計による部品の生産納入を図る貸与図方式への転換を図ることで、継続的な取引を確保できるようになる。

解説

それでは早速各設問を見ていきましょう。

 

【設問1】
買い手である完成品メーカーと売り手である部品メーカーの取引関係に関する問題です。

選択肢アは、発注先を分散することによって「部品メーカー1社当たりの生産負担が軽減され、部品コストが低下する」とありますが、逆に1社あたりの生産量が減るため生産効率が低下し、部品コストは増加する傾向にあります。よってこの選択肢は×です。
ちなみに、もし「生産負担が軽減され」ではなく、「競争原理が働き」という言葉であれば、発注先を分散することで価格が下がる効果が考えられなくもありませんでしたが、この問題の場合は生産負担に視点を置いているため、明らかに×と判断できます。

選択肢イは、「発注先を多様化して競わせること」は「部品メーカーの忠誠心を高め」ることにはつながらないため×と判断できます。

選択肢ウは、「専門部品メーカー数社に発注を集約すれば、そのメーカーに独自能力が蓄積され」とありますが、専用部品であればその可能性はありますが、汎用部品の場合、買い手は他にも多数いると考えられますので、特に独自能力が蓄積することもなく、完成品メーカーの交渉力が低下するとは断言できないと考えられます。よってこの選択肢は×です。
ただし、この選択肢は判断が悩ましい場合は、一旦パスして残りの選択肢をチェックするのもありです。

選択肢エは、「発注先の部品メーカーを増やせば」・・・「調達の管理コストが下がる」とありますが、発注先が増えれば管理コストは上がります。よってこの選択肢は×です。
しかし、この選択肢では上記の因果関係の間に「調達部品の発注明細の標準化や取引条件の単純化が進み」というもっともらしい文章が挟まっているため、なんとなく〇にしたくなってしまうかもしれません。
まとめシート(前編)のコラムでも解説しましたが、このような悩ましい選択肢は、文章の区切りをスラッシュで区切りながら、それぞれの因果関係がおかしくないかをチェックしていくようにしましょう。

選択肢オは、その通りで、分散発注はコスト増につながる可能性はありますが、不測の事態への対処力の向上には効果があります。

以上から、設問1の正解は選択肢オとなります。

【設問2】
売り手である部品メーカーの取る対応策に関する問題です。

選択肢アは、「範囲の経済」ではなく「規模の経済」に関する説明です。よって、この選択肢は×です。
この問題のように似たような用語をさりげなく誤りの選択肢に入れてくる場合があるので、似たような用語は常にペアで頭の中に入れておくようにすると、間違いに気づきやすくなります。

選択肢イは、部品メーカーが特殊な生産設備に投資をすると、他に転用することができないため、値下げ圧力には対応しにくくなります。よってこの選択肢は×です。

選択肢ウは、系列部品メーカーが完成品メーカーの製品開発に積極的に参加する機会を増やすのであれば、ブラックボックス化するのではなく、情報を共有する方が望ましいと考えられるため×です。

選択肢エはその通りで、選択肢イでも検討したように他に転用できない設備に投資することになるため、その投資負担を求めることができます。

選択肢オの貸与図方式は、部品メーカーではなく完成品メーカーが設計した図面を部品メーカーに貸与する方式ですので、「自社の設計による部品の生産納入を図る」という説明は間違っています。

以上から、設問2の正解は選択肢エとなります。

 

 

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