【過去問解説(法務)】H25第2問 法律の前提知識

今回は平成25年第2問の法律の前提知識に関する問題について解説します。

 

H25 経営法務 第2問

以下の会話は、中小企業診断士であるあなたとX株式会社(以下「X社」という。)の代表取締役甲氏との間で行われたものである。現在、X社は、Y株式会社(以下「Y社」という。)との間で、Y社の完全子会社であるZ株式会社(以下「Z社」という。)の全株式の買取りに向けた交渉を行っている。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。

甲 氏:「今、わが社による Z 社株式の買取りについての契約書を読んでいるの  ですが、見慣れない用語が飛び交っていて正直よく分かりません。」
あなた:「確かに、株式譲渡契約は、売買、賃貸、請負といった、企業間の商取引とは異なる構造になっているので、慣れないと難しいですよね。これらの契約には、[ A ]や[ B ]事項といった[ C ]系の概念が用いられており、[ D ]系に属する日本にはなじみにくいところがあります。」
甲 氏:「まず、クロージングとは何でしょうか。」
あなた:「取引の実行のことですね。通常、契約書を締結してから、取引を実行するまでに間隔が空くので、クロージングという概念がでてきます。株式譲渡の場合でいうと、売主から買主への株主権の移転と買主から売主への株式譲渡代金の支払ということになります。」
甲 氏:「なるほど。[ A ]とはどういうことでしょうか。」
あなた:「株式譲渡の場合だと、契約の一方当事者が、相手方当事者に対し、株式やその株式を発行している株式会社の状況などについて、契約書締結時やクロージング時などの一定の時点において、一定の事項が真実かつ正確であることを[ A ]するものです。今回の契約書ですと、Y社が御社に対して、Z社において未払い残業代がないことなどを[ A ]しています。」
甲 氏:「難しいですねえ。[ B ]事項とは何でしょうか。」
あなた:「契約の一方当事者が、相手方当事者に対し、一定の行為を行う、又は行わないことを約束し、又はその義務を負うことです。大きく分けてクロージング前のものとクロージング後のものがあります。今回の契約書ですと、Y 社がクロージングまで、Z 社を適切に経営していくことなどがこれに該当します。」
甲 氏:「やっぱり、難しいですねえ。」
あなた:「うまく説明できなくてすみません。これらを理解するには、[ A ]や[ B ]事項に違反した場合にどういう効果が発生するのかを考えると分かりやすいかもしれません。まず、クロージング前に[ A ]違反や[ B ]事項違反が発覚した場合には、一方当事者が違反した当事者に対し、①取引の実行拒否、②契約の解除及び③損害の補償請求を求めることができると契約書に定めることが多いです。他方、クロージング後に違反が発覚した場合については、①から③までのうち、[ E ]のみ認められると契約書に定めることが多いです。」
甲 氏:「なるほど。ようやく理解できました。買主である当社としては、契約締結後に取引を取り止めたい事由や契約を解除したい事由、Y社に損害を補償してもらいたいと考えるケースについてY社の[ A ]や[ B ]事項として契約書に定めておけばいいわけですね。」
あなた:「そのとおりです。」
 

(設問1)
会話の中の空欄A、B及びEに入る語句の組み合わせとして最も適切なものはどれか。
ア A:誓約 B:表明・保証 E:②契約の解除
イ A:誓約 B:表明・保証 E:③損害の補償請求
ウ A:表明・保証 B:誓約 E:①取引の実行拒否
エ A:表明・保証 B:誓約 E:③損害の補償請求

(設問2)
会話の中の空欄C及びDに入る語句の組み合わせとして最も適切なものはどれか。
ア C:英米法 D:大陸法
イ C:国際法 D:国内法
ウ C:私法 D:公法
エ C:手続法 D:実体法

 

それでは早速それぞれの設問を見ていきましょう。

まず設問1ですが、「誓約」と「表明・保証」という用語がAとBどちらに入るかが問われています。
これは、法律用語を知らなかったとしても、前後の文脈から判断できるのではと思います。
Aの説明には「契約書締結時やクロージング時などの一定の時点において、一定の事項が真実かつ正確であることを[ A ]するもの」
とあり、
Bの説明には「契約の一方当事者が、相手方当事者に対し、一定の行為を行う、又は行わないことを約束し、又はその義務を負うことです。」
とあります。
Aの説明より、Bの説明は「約束し、またはその義務を負う」とあり、より強い印象を受けます。そのためAには「表明・保証」がBには「誓約」が入ると考えられます。

次に空欄Eについて考えてみます。
クロージング前と後で違うのは、クロージング前はまだ契約が履行されていませんがクロージング後は、契約の一部が履行されている可能性もあるという点です。
①取引の実行拒否、②契約の解除及び③損害の補償請求を求めることができる
のうち、②はそもそも契約してしまってからなので、難しいと考えられます。また①も一部契約が履行され、取引が行われた後であればそれを覆すのは難しいと考えられます。
よって③損害の補償請求を求めるというのが〇と考えられます。

以上から正解は選択肢エとなります。

次に設問2について考えます。
「[ D ]系に属する日本にはなじみにくいところがあります。」という記載から、Dには日本が所属する系統の言葉が入るはずであると判断できます。
そうすると選択肢ウとエはおかしいためすぐに削ることができます。
また、国際法系と国内法系という言葉も実際に当てはめてみると変ですので、Dには「大陸法」という言葉を入れるのが一番しっくりします。

 

以上から、正解は選択肢アと考えられます。

 

 

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