【過去問解説(法務)】H26 第4問 民法

今回は、H26年経営法務の第4問の民法の問題について解説します。

H26 第4問 (設問1,2)

取引先の信用状態が悪化した場合における債権回収に関する以下の会話は、中小企業診断士であるあなたとX株式会社の代表取締役甲氏との間で行われたものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。
甲 氏:「Y社が振り出した手形が不渡りになったという情報を聞きました。Y社に対しては、売掛債権が1億円もあるんです。これを回収できないとなると当社の経営に大きな打撃となってしまいます。」
あなた:「何か担保は取っていなかったのですか。」
甲 氏:「何も取れませんでした。」
あなた:「その売掛債権の内容はどうなっていますか。」
甲 氏:「Y社は、卸売業者です。当社は、取引基本契約書を締結して、Y社に対して当社の製品を販売し、Y社は、これを小売業者に転売しています。
当社がY社に対して有する売掛債権は、当社の製品をY社に販売して発生したものです。」
あなた:「その売掛債権について、支払期限は、もう来ているのですか。」
甲 氏:「いや、まだ来ていません。」
あなた:「では、取引基本契約書に、[ A ]として、手形の不渡りが定められていますか。」
甲 氏:「いや、ちょっと分かりません。」
あなた:「ちょっと契約書を見せてもらえますか。」
甲 氏:「どうぞ、これです。」
あなた:「どれどれ。ああ、ここに定められていますね。[ B ]を行使するには支払期限が到来している必要があるのですが、ここに[ A ]として手形の不渡りが定められているので、いますぐ[ B ]を主張できるかもしれません。[ B ]を主張できれば、甲さんの会社がY社に販売した製品について、他の債権者に先立って弁済を受ける権利、つまり、優先弁済権が認められます。」
甲 氏:「でも、Y社は、既に、当社から購入した製品を転売して、買い受けた第三者がその製品の引渡しを受けてしまっているようです。それでも優先弁済権が認められるのですか。」
あなた:「その場合でも、Y社が第三者から転売代金の支払を受けていなければ、その転売代金債権について[ B ]を行使できることになっています。これを[ C ]といいます。」
甲 氏:「そんなことができるのですか。」
あなた:「ただ、この[ C ]もY社が第三者から転売代金の支払を受けてしまっていると行使することができません。」
甲 氏:「手続はどうすればいいのでしょうか。」
あなた:「Y 社が転売代金を受け取る前に裁判所に申し立てる必要があるので、弁護士さんに依頼するのがよいと思います。とにかく時間がないので、早く顧問弁護士の先生のところに相談に行きましょう。」
(設問1)
会話の中の空欄Aに入る語句として最も適切なものはどれか。
ア 危険の移転事由
イ 期限の利益喪失事由
ウ 契約の解除事由
エ 契約の取消事由
(設問2)
会話の中の空欄B及びCに入る語句の組み合わせとして最も適切なものはどれか。
ア B:先取特権 C:物上代位
イ B:先取特権 C:物上保証
ウ B:抵当権 C:物上代位
エ B:抵当権 C:物上保証

解説

設問1は本文中の空欄Aに、設問2は空欄B、Cに当てはまる用語を入れる問題です。
それでは早速各空欄について考えていきましょう。

空欄Aは本文の情報から
・Aとしては手形の不渡りが定められている。
・Aとして手形の不渡りが設定されていれば、権利Bがすぐに主張できる可能性がある。
ということがわかります。

この状態で検討しても良いかもしれませんが、できれば先に空欄Bがわかっていると空欄Aも検討しやすいでしょう。

ですので、まずは先に空欄Bについて考えてみます。
空欄Bは本文の情報から
・行使するには支払期限が到来している必要がある
・Bを主張できれば優先弁済権が認められる
・事前に担保は取っていなかった
ということがわかります。
選択肢を見ると、空欄Bには、先取特権もしくは抵当権が入りますが、この問題の場合、担保は取っていなかったということですので、抵当権は当てはまらず、先取特権があてはまります。
そのため、正解は選択肢アまたはイに絞られます。

次に空欄Cを見てみましょう。
空欄Cは本文の情報から
・Y社が第三者から転売代金の支払を受けていなければ、その転売代金債権について先取特権を行使できる
・Y社が第三者から転売代金の支払を受けてしまっていると行使できない
とあります。
選択肢を見ると、空欄Cには、物上代位もしくは物上保証が入ります。
物上代位とは、担保物の形が変わってもそれに対し担保物件の効力が及ぶことをいい、物上保証とは、自分ではなく他人の債務のために自分の物件を担保にすることです。
そのため、それを踏まえると、空欄Cには物上代位が入ります。

以上から設問2の正解は選択肢アとなります。

設問1に戻ると、空欄Bには先取特権が入りますので、
・Aとしては手形の不渡りが定められている。
・Aとして手形の不渡りが設定されていれば、先取物件がすぐに主張できる可能性がある。
これを踏まえると空欄Aには期限の利益喪失事由が入ります。

以上から設問1の解答は選択肢イとなります。

 

 

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