【過去問解説(法務)】H26 第15問 英文契約書

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今回は、H26年経営法務の第15問について解説します。

 

H26 第15問

次の英文契約書の秘密保持条項を読んで、下記の設問に答えよ。
Article XX “Confidentiality”
A. Recipient shall maintain in confidence and safeguard all Confidential Information which is disclosed by Discloser to Recipient in connection with this Agreement and which is designated confidential at the time of disclosure.
B. The Confidential Information may include, but is not limited to, all technical, financial, marketing, staffing and business information.
C. The term Confidential Information shall not include information which :
a) Was or becomes publicly available without the breach of this Agreement by Recipient ;
b) Was in Recipientʼs possession free of any obligation of confidence at the time of Discloserʼs communication thereof to Recipient ;
c) Is developed by Recipient independently of and without reference to any of Discloserʼs Confidential Information or other information that Discloser disclosed in confidence to any third party ;
d) Is rightfully obtained by Recipient from third parties authorized to make such disclosure without restriction ; or
e) Is identified by Discloser as no longer [ X ] or confidential.
D. Provided, however, that nothing contained herein shall prevent the Recipient from disclosing any of such Confidential Information to the extent that such Confidential Information is required to be disclosed by law or for the purpose of complying with governmental regulations.
E. The [ Y ] the facts set forth in sub-paragraphs C a) through e), and Paragraph D shall rest with the Recipient.

(設問1)
この秘密保持条項の規定の内容として、最も不適切なものはどれか。
ア 受領者の本契約違反によらずに公知となった情報は、秘密情報に該当しない。
イ 秘密情報を利用せずに独自に受領者が開発した同一の情報は、秘密情報に該当するが、開示しても秘密保持義務違反にならない。
ウ 法令又は政府の命令を遵守するために開示を要求される秘密情報は、秘密情報に該当するが、開示しても秘密保持義務違反にならない。
エ 本条の秘密情報の要件として、開示時に秘密指定を行う必要があるが、その秘密指定が特定の限定された方法によるものであることは必要でない。

(設問2)
文中の空欄 X には「機密の」、空欄 Y には「立証責任」を意味する語句が入る。各空欄に入る語句の組み合わせとして最も適切なものはどれか。
ア X:backroom       Y:evidence-based finding of
イ X:exchange-valuable Y:lender liability of
ウ X:expensive      Y:preponderance of evidence of
エ X:proprietary     Y:burden of proving

解説

今回は英文契約書に関する問題です。

英文契約書の問題は、元々の英語力によって取りに行く問題にするか、捨て問にするのかが変わってきます。

多少英語が読めるという方であれば、英文契約書独特の単語を少し覚えれば十分対応できる問題もありますが、英語は見るのも嫌!という方であれば、英文を読むための勉強から始めないといけないので、潔く捨て問にして他の部分で点が取れるよう頑張りましょう。

 

英文契約書の問題もミニケース問題や2次試験と同様、問題文(与件文)を頭からいきなり読むのではなく、まず設問の方に目を通してから、「何をチェックすればいいのか」を頭に入れた上で、問題文(与件文)を読みにかかると効率的です。

それでは、まずは設問文をチェックしてみましょう。

 

【設問のチェック】

(設問1)

この秘密保持条項の規定の内容として、最も不適切なものが問われています。

問題文の冒頭の日本語の部分だけ見ると「次の英文契約書の秘密保持条項を読んで、下記の設問に答えよ」とありますので、この文には秘密保持条項が書かれていることが想定できます。

そして、最も不適切なものを問われているので、選択肢ア~エのうち3つはこの英文の中で書かれていることが想定できます。

そのため、英文を読み進めるときは、選択肢ア~エの内容を頭の片隅に入れながら読み進め、一致する部分がないかをチェックするという形で読んでいけばいいことがわかります。

 

(設問2)

これは英単語のテスト問題ですね。Xとして「秘密の」、Yとして「立証責任」を意味する語句を選べということですので、問題文(与件文)を読まなくても解けそうです。

まず、該当する単語を選んで、念のため問題文と照らし合わせて、間違いないことを確認するという流れで行くことにします。

 

【設問1】

それではまずは設問1を解いていきます。

各選択肢の内容を頭に入れながら英文を読み進めて行きましょう。

 

英文の読み方は人それぞれかと思いますが、私は手早く情報を取るために読むときは、若干変な日本語でも気にせず頭から読んでいく派ですので、それをちょっと再現した形で訳をご紹介します。

A
受領者(Recipient)は維持しないといけない(shall maintain)秘密を(in confidence)、それと(and)守らないといけない(safeguard)全ての秘密の情報を(all Confidential Information)その情報とは、開示者によって受領者に開示された(which is disclosed by Discloser to Recipient)この契約に関連した情報で(in connection with this Agreement)そして(and)秘密と指定された情報である(designated confidential)この開示の時点で(at the time of disclosure)
これは、選択肢エの「本条の秘密情報の要件として、開示時に秘密指定を行う必要がある」のことを言っていると考えられます。
ただし、「その秘密指定が特定の限定された方法によるものであることは必要でない」という点については、この先の条項で秘密指定の方法について書かれているかもしれませんので、まだ、選択肢エが完全に〇とは確定できません。

B
秘密の情報は(The Confidential Information)含むだろう(may include)、だが限定されずに(but is not limited to)、全ての技術的、財務的、マーケティング的、人事的、ビジネス的情報を(all technical, financial, marketing, staffing and business information)

これはつまり、秘密の情報には技術的、財務的、マーケティング的、人事的、ビジネス的な全ての情報が含まれるということですが、これに直接関連した選択肢はなさそうです。

C

用語「秘密情報」とは(The term Confidential Information)含まない(shall not include)以下の情報を

a) 

公知だったもしくは公知となった情報(Was or becomes publicly available)受領者によるこの条約の違反なしに(without the breach of this Agreement by Recipient)

これには、選択肢アの記述が当てはまります。よって、選択肢アは正しいと考えられます。

 

b) 

受領者が義務を負っていなかった(Was in Recipientʼs possession free of any obligation )秘密情報(of confidence)開示者とのコミュニケーションの時点で(at the time of Discloserʼs communication)それについての受領者との(thereof to Recipient)

これは、特にどの選択肢も関係しなさそうです。

c)

開発された情報(Is developed)受領者によって(by Recipient)独自に(independently of)、そして(and)参照せずに(without reference to)開示者のどんな秘密情報や(any of Discloserʼs Confidential Information or)他の情報(other information)開示者が秘密に開示した(that Discloser disclosed in confidence)他の第三者に(to any third party)

これは選択肢イに当てはまる記述ですが、選択肢イは「秘密情報を利用せずに独自に受領者が開発した同一の情報は、秘密情報に該当する」と書いてあるものの、この契約書では「秘密情報に含まれない情報」のリストに挙げられています。そのため、選択肢イは×と判断できます。

これで誤りの選択肢を確定することができましたが、念のため残りの選択肢も確認していくために、ざっくり英文を読み進めて行きます。

d)

正当に獲得された情報(Is rightfully obtained)受領者によって(by Recipient)権限を与えられた第三者から(from third parties authorized)そのような秘密を制限なく公開する権限を(to make such disclosure without restriction)、または(or)

これは、特にどの選択肢も関係しなさそうです。

e) 

特定された情報(Is identified)開示者によって(by Discloser)これ以上[機密の]または秘密の情報として(as no longer [ X ] or confidential)

これも、特にどの選択肢も関係しなさそうです。

 

D. 

もし(Provided)、しかしながら(however)、ここに何が含まれようと(that nothing contained herein)防がれる(shall prevent)受領者から(the Recipient from)開示されることが(disclosing)どんな秘密情報も(any of such Confidential Information)以下の範囲内で(to the extent that)秘密情報が要求される(such Confidential Information is required)開示するように(to be disclosed)法律によって(by law)または(or)従うために(for the purpose of complying)政府の要求に(with governmental regulations)

これは、選択肢ウの記述が当てはまります。よって、選択肢ウは正しいと考えられます。

 

E

立証責任は(The [ Y ] the facts )、サブパラグラフC a)からe)までとパラグラフDに示されている(set forth in sub-paragraphs C a) through e), and Paragraph D)受領者にある(shall rest with the Recipient)

これは、特にどの選択肢も関係しなさそうです。

 

判断を保留にしていた選択肢エも秘密指定の方法について書かれているものは特になかったため〇と判断できます。

 

以上から、設問1の正解は選択肢イとなります。

 

【設問2】

設問2は単語テストの問題です。

Xについては、

ア backroom:秘密の部屋

イ exchange-valuable:交換価値(?)

ウ expensive:高価な

エ proprietary:独占の、機密の

なので、Xの段階で選択肢エに絞ることができます。

もし、上記の中で知らない単語があり、不安な場合は念のためYについても確認します。

ア evidence-based finding of:証拠に基づいた発見の

イ lender liability of:貸し手の責任の

ウ preponderance of evidence of:圧倒的多数の証拠の

エ burden of proving:証明する責任を負う

なのでYについて確認しても選択肢エで問題なさそうです。

こちらも知らない単語があるかもしれませんが、Xとの合わせ技で絶対違うものを削っていけば、正解にたどり着ける可能性は高まるのではと思います。

 

以上から設問2の正解は選択肢エとなります。

 

 

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