今回は、H27年経営法務の第16問について解説します。
H27 第16問
次の英文契約書の秘密保持条項を読んで、下記の設問に答えよ。日本企業と外国企業との間の共同研究開発契約書(Cooperative Research and Development Agreement)において規定されている以下の条項を読んで、下記の設問に答えよ。
Article ●● [ ]
1.During the term of this Agreement, no collaborative research and/or development in competition with research or development under this Agreement shall be made by any party to this Agreement with a third party, without obtaining its prior written approval of the other party.
2.Termination of this Agreement shall be without prejudice to the obligation provided for in the preceding paragraph.(設問1)
契約書の空欄に入る語句として最も適切なものはどれか。
ア Confidentiality
イ Non-competition
ウ Non-delegation to a third party
エ Obligation upon Termination(設問2)
共同研究開発契約において、特に本条第2項のような規定を定めることは、わが国では違法となるおそれが強いとされているが、その根拠となる法律として、最も適切なものはどれか。
ア 産業技術力強化法
イ 中小企業新事業活動促進法
ウ 独占禁止法
エ 特許法
解説
今回は英文契約書に関する問題です。
英文契約書の問題は、元々の英語力によって取りに行く問題にするか、捨て問にするのかが変わってきます。
多少英語が読めるという方であれば、英文契約書独特の単語を少し覚えれば十分対応できる問題もありますが、英語は見るのも嫌!という方であれば、英文を読むための勉強から始めないといけないので、潔く捨て問にして他の部分で点が取れるよう頑張りましょう。
英文契約書の問題もミニケース問題や2次試験と同様、問題文(与件文)を頭からいきなり読むのではなく、まず設問の方に目を通してから、「何をチェックすればいいのか」を頭に入れた上で、問題文(与件文)を読みにかかると効率的です。
それでは、まずは設問文をチェックしてみましょう。
【設問のチェック】
(設問1)
このタイトルが問われています。選択肢に書かれている単語の意味を知っているかどうかで解きやすさが変わってきます。
選択肢を見てみると
選択肢ア Confidentiality(秘密保持)
選択肢イ Non-competition(協業禁止)
選択肢ウ Non-delegation to a third party(委任・委託禁止)
選択肢エ Obligation upon Termination(終了時の義務)
となっています。
タイトルさえ選べればいいので、選択肢に挙げられた単語の意味さえ知っていれば、この問題に対応するためには英文を緻密に読まなくても、ざっくりと雰囲気がわかれば対応できそうです。
(設問2)
「特に本条第2項のような規定を定めることは、わが国では違法となるおそれが強いとされている」とありますので、第2項の内容を読んだ上で、選択肢に挙げられている法律の趣旨と照らし合わせて判断する必要があります。
【設問1】
それではまずは設問1を解いていきます。
各選択肢の内容を頭に入れながら英文を読み進めて行きましょう。
英文の読み方は人それぞれかと思いますが、私は手早く情報を取るために読むときは、若干変な日本語でも気にせず頭から読んでいく派ですので、それをちょっと再現した形で訳をご紹介します。
1.
この契約の期間中(During the term of this Agreement), 共同研究開発や競争的研究開発をやってはいけない(no collaborative research and/or development in competition with research or development) この契約に基づいて(under this Agreement) どの契約当事者も(shall be made by any party to this Agreement) 第三者と (with a third party), 獲得しない場合は(without obtaining) 事前の書面の承認を (its prior written approval) 他方の当事者から(of the other party.)
2.
この契約の終了は(Termination of this Agreement) 毀損するものではない(shall be without prejudice to) 義務を(the obligation) 前項で示された (provided for in the preceding paragraph.)
第1項では、第三者との共同研究開発や競争的研究開発をやってはいけない旨が書かれていますので、選択肢で示されたタイトルのうち、選択肢イの「Non-competition(協業禁止)」が入ると考えられます。
よって、設問1の正解は選択肢イとなります。
【設問2】
設問2は、英文を読んでみると、第1項で示された協業禁止の義務は、契約終了後も続く旨が書かれています。
契約が終了したのに協業を禁止する条項が残るというのは、独占禁止法で規定されている「不公正な取引方法」に該当する可能性があります。
以上から設問2の正解は選択肢ウとなります。
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