今日は経営法務H30第7問の会社法(資本の部)に関する問題について解説します。
資本の部の計数の増減に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 資本金の額を減少させ、その減少させた金額と同じ金額だけその他資本剰余金の額を増やすためには、債権者異議手続を行う必要がある。
イ 資本金の額を減少させ、その減少させた金額と同じ金額だけ利益準備金の額を増やすためには、債権者異議手続を行う必要がある。
ウ 資本準備金の額を減少させ、その減少させた金額と同じ金額だけ資本金の額を増やすためには、債権者異議手続を行う必要がある。
エ その他資本剰余金の額を減少させ、その減少させた金額と同じ金額だけ資本金の額を増やすためには、債権者異議手続を行う必要がある。
解説
債権者にとって、資本金は債権回収の担保となる財産的な基礎です。そのため、「資本金の額を減少させる」場合は、原則として債権者保護手続が必要となります。
選択肢ア:適切です。資本金の額を減少させる場合(減資)、会社法第449条により、原則として債権者保護手続が必要です。資本金を減少させて、その分をその他資本剰余金に振り替える行為は、配当可能な原資が増えること(=会社から財産が流出しやすくなること)を意味するため、債権者の利害に直結します。
よって、選択肢アが正解です。
念の為、他の選択肢も確認しておきましょう。
選択肢イ:誤りです。資本金の額を減少させて「利益準備金」を増やすという計数変更は、会社法上想定されていません。資本金を減少させて増加させることができるのは「資本剰余金」のみです(会社法第447条第1項第2号)。したがって、手続の要否以前に内容自体が不適切です。
よって、この選択肢は誤りです。
選択肢ウ:誤りです。「準備金(資本準備金)」を減少させて「資本金」を増やす場合、債権者にとっては担保となる資本金が増える(=有利になる)ことになります。この場合、債権者を害するおそれがないため、債権者保護手続は不要です
よって、この選択肢は誤りです。
選択肢エ:誤りです。「剰余金(その他資本剰余金)」を減少させて「資本金」を増やす場合も、ウと同様に債権者にとっては有利な変更です。したがって、債権者保護手続は不要です。
よって、この選択肢は誤りです。
以上より、選択肢アが正解となります。
