【過去問解説(経営法務)】R1 第6問 (1)(2) 株主の権利

今日は経営法務のR1第6問(1),(2)について解説します。

R1 経営法務 第6問 (1)(2)

X株式会社(以下「X社」という。)は、取締役会及び監査役会を設置している会社(公開会社ではなく、かつ大会社ではない)である。
中小企業診断士であるあなたは、2019 年 1 月に、今年(2019 年)の株主総会のスケジュール等について、X社の株主総会担当者の甲氏から相談を受けた。以下の会話は、その相談の際のものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。

甲 氏:「当社の事業年度は、 4 月 1 日から翌年 3 月 31 日までです。2019 年は 6 月27 日(木)に株主総会を開催したいと考えています。株主総会の招集通知はいつまでに発送すればよいですか。」
あなた:「御社では、株主総会に出席しない株主に、書面による議決権の行使や、電磁的方法による議決権の行使を認める制度を設けていますか。」
甲 氏:「いいえ。設けていません。」
あなた:「そうすると、御社は、取締役会を設置している会社ですが、公開会社ではありませんし、また、書面による議決権の行使や、電磁的方法による議決権の行使を認める制度を設けていないので、[A] までに招集通知を発送する必要があります。」
甲 氏:「分かりました。ところで、今回の株主総会でも、昨年と同様、 3 年前まで当社の取締役であった乙氏が、「自分を取締役に選任しろ」という議案を株主提案として提出してくると聞いています。どのような点に注意した方がよいでしょうか。」
あなた:「御社では、定款で株主提案に関する何らかの規定は設けていますか。」
甲 氏:「いいえ。定款では特に規定は設けていません。」
あなた:「 B 」

(設問 1 )
会話の中の空欄Aに入る記述として、最も適切なものはどれか。
ア 株主総会の日の 1 週間前
イ 株主総会の日の 2 週間前
ウ 原則として株主総会の日の 1 週間前ですが、定款で 1 週間を下回る期間を定めた場合にはその期間の前
エ 原則として株主総会の日の 2 週間前ですが、定款で 2 週間を下回る期間を定めた場合にはその期間の前

(設問 2 )
会話の中の空欄Bに入る記述として、最も適切なものはどれか。
ア 御社の場合、株主が、株主提案について、議案の要領を株主に通知することを求めるには、株主総会の日の 6 週間前までに請求することが必要です。このため、乙氏が株主提案をしてきた場合は、この要件を満たしているのかを確認してください。
イ 御社の場合、株主が、株主提案について、議案の要領を株主に通知することを求めるには、総株主の議決権の 100 分の 3 以上の議決権又は 300 個以上の議決権を、 6 か月前から引き続き有していることが要件となります。このため、乙氏が株主提案をしてきた場合は、この要件を満たしているかを確認してください。
ウ 株主の提案する議案が、実質的に同一の議案につき株主総会において総株主の議決権の 10 分の 1 以上の賛成を得られなかった日から 3 年を経過していない場合は、会社は、その株主提案を拒絶することができます。乙氏は、昨年の株主総会でも同様の株主提案をしてきたとのことですので、乙氏が株主提案をしてきた場合は、まず昨年の賛否の状況を確認してください。
エ 株主の提案する議案が、法令や定款に違反する議案の場合であっても、株主提案は、株主の基本的な権利ですので、議案の要領を株主に通知する必要があります。このため、乙氏が株主提案をしてきた場合は、その提案が法令に違反するものであっても、必ず、議案の要領を株主に通知してください。

解説

株主の権利について、(1)は株主総会招集手続き、(2)は株主提案権の問題です。
それでは早速問題を見ていきましょう。

設問1
まとめシートでは、株主総会の招集手続きについて以下の通りまとめています。

こちらをもとに、X社のケースを当てはめてみると、X社は
・非公開会社
・取締役会設置会社
・通知方法については言及無し(書面も電磁的方法も認めていないのは、出席しない株主の議決権行使方法で、招集の方法についてではありません)

ですので、1週間前までに通知する必要があります。
以上から、正解は選択肢アとなります。

設問2
株主提案権には以下の3種類があります。
①議題提案権:株主総会のテーマである議題を提⽰する権利
②議案提案権:株主総会のテーマである議題に対する具体的提案である議案を提⽰する権利
③議案通知請求権:株主が提出しようとする議案をあらかじめ招集通知などで他の株主に通知することを請求できる権利

これらを踏まえて各選択肢を確認していきましょう。

選択肢ア:③議案通知請求権についてです。請求期限は株主総会の日の8週間前までです。
よって、この選択肢は×です。

選択肢イ:③議案通知請求権についてです。株式の保有条件は1% or 議決権300個以上です。
よって、この選択肢は×です。

選択肢ウ:②議案提案権についてです。選択肢の通りで特に問題ありません。
よって、この選択肢は〇です。
ちなみに、この②議案提案権のみ、保有議決権の制限はありません。

選択肢エ:②議案提案権についてです。このように、法律に反してでも…というのは常識的に考えて間違っていそうなので外してよいでしょう。
よって、この選択肢は×です。

以上から、正解は選択肢ウとなります。

 

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