今日は、経営法務 R5 第16問 設問2 について解説します。
以下の会話は、X株式会社の代表取締役である甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。
甲 氏:「弊社は、米国ニューヨーク市に本拠を置くY社から商品を輸入し、国内で販売しようと考えています。それに当たって、Y社から届いた契約書案を検討しているのですが、以下の条項はどのような内容でしょうか。」
1. This Agreement shall be governed by and construed inaccordance with the laws of the state of New York, the United States
of America, without reference to conflict of laws principle.
2. All dispute arising out of or in connection with this Agreement, including any question regarding its existence, validity or
termination, shall be referred to and finally resolved by arbitration in New York City, New York, the United States of America by the
American Arbitration Association in accordance with the Arbitration Rules of the American Arbitration Association.
あなた:「 1 項は [A] を定めており、 2 項は [B] を規定しております。御社は日本でY社から輸入した商品を販売されるとのことですので、準拠法は日本法で提案するのはいかがでしょうか。」
甲 氏:「ありがとうございます。その点については、Y社と交渉しようと思います。裁判と仲裁はどのような違いがあるのでしょうか。」
あなた:「それぞれメリット・デメリットがありますので、その点も含めて、知り合いの弁護士を紹介しますので、相談に行きませんか。」
甲 氏:「ぜひ、よろしくお願いします。」
(設問 2 )
会話の中の下線部の裁判と仲裁に関する記述として、最も適切なものはどれか。
なお、本設問における裁判と仲裁に関する記述は、日本法を前提に考えるものとする。
ア 外国仲裁判断の承認および執行に関するニューヨーク条約の加盟国でなされた仲裁判断については、原則として、その加盟国において執行することができる。
イ 裁判と仲裁は、双方とも原則公開の手続きであり、その判断は公開される。
ウ 仲裁は、裁判のように勝ち負けを決めるのではなく、話合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図るもので、合意ができなかった場合には不成立となる。
エ 仲裁は、仲裁判断に不服がある場合、原則裁判所に不服申立をすることができる。
解説
国際取引のうち、裁判と仲裁に関する問題です。
まとめシートでは、以下の通り解説しています。
それでは選択肢をみていきましょう。
選択肢ア:その通りです。仲裁によって当事者間の紛争を解決するという本仲裁合意が当事者間に存在する場合には、契約当事者間で生じた特定の紛争について仲裁手続によって解決を図ることができます。また、その際原則として、その加盟国において執行することができます。
よって、この選択肢は〇です。
選択肢イ:誤りです。仲裁とは、紛争が起こった場合に、裁判所に解決を求めるのではなく、契約の当事者が選定した公正・独⽴な第三者である仲裁⼈の判断に委ね、その判断に従うという合意に基づいて紛争を解決する⽅法のことです。仲裁には裁判と同様拘束⼒がありますが、裁判のように公開されず、裁判より迅速に⾏うことができるという利点があります。
よって、この選択肢は×です。
選択肢ウ:誤りです。仲裁とは、紛争が起こった場合に、裁判所に解決を求めるのではなく、契約の当事者が選定した公正・独⽴な第三者である仲裁⼈の判断に委ね、その判断に従うという合意に基づいて紛争を解決する⽅法のことです。
「合意ができなかった場合には不成立」となるのは、調停についての説明となります。
よって、この選択肢は×です。
選択肢エ:誤りです。不服がある場合、裁判所に不服申立をすることができるのは、裁判についての説明となります。
選択肢イ、ウでも説明の通り、仲裁は裁判所に解決を求める⽅法ではありません。
よって、この選択肢は×です。
以上から、正解は選択肢アとなります。
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