【過去問解説(企業経営理論)】H29第28問 価格戦略

企業経営理論の前回はマーケティングの4PのうちのProduct、つまり製品戦略についてでしたが、今回はPrice、つまり価格戦略についてです。

 

H29 企業経営理論 第28

マーケティングにおける価格に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 価格には、品質のバロメーターとしての役割や、プレステージ性を顕示する機能も含まれている。後者に関しては威光価格の考え方があるが、これは消費者の価格感度を高め、需要の価格弾力性を低下させるうえで重要な手法である。
イ コモディティ化に陥っていた製品のブランドイメージをマーケティング努力によって向上させることに成功すると、その製品の需要曲線は上方に移動し、数量プレミアム、価格プレミアム、またはその両方が発生する機会が生じる。
ウ 高い市場占有率をもつ企業は、しばしば同種製品市場での競争相手となる他の上位企業と相談し、それぞれの製品の価格に関する意思決定を行うことがある。これによって市場における競争の公正性が担保され、非価格競争が促される。
エ マーケティング・コンセプトでは、顧客指向が最優先課題であるため、新製品の市場導入期においては利益指向を追求しないことが強調されている。

 

 

順番に選択肢を見ていきましょう。

 

選択肢アは、「消費者の価格感度を高め」とあります。

これは典型的な形容詞入れ替え型の誤りの選択肢で、「消費者の価格感度を高め」ではなく、「低め」となるので×です。

価格感度とは、価格弾力性と似たようなもので、製品の価格の変化に対する消費者の感度、つまり、価格が変化したら消費者がどれだけ反応するかということを表した用語です。
価格感度が高ければ、ちょっと値段が上がったらみんなが買わなくなりますが、価格感度が低ければ、多少値段が上がっても消費者はその商品を買い続けます。

 

選択肢イは、経済っぽい雰囲気です。誤りが紛れ込むとしたら、「その製品の需要曲線は上方に移動」というところと考えられますので、少し検証してみます。

「コモディティ化に陥っていた製品のブランドイメージをマーケティング努力によって向上させる」ということは、もともとは低い価格でしか売れなかった製品を高い値段で売ることができるようになった、ということです。

需要曲線は縦軸を価格、横軸を量としたときの、需要の変化を表した曲線ですので、同じ製品でも高い価格で売れるようになったということは、需要曲線も上方にシフトすると考えられます。

よって、この表記は間違っていないと考えられます。

ほかの記述も間違ったところはなさそうなので、○と考えられます。

 

なお、「その製品の需要曲線は上方に移動」が怪しいかもと思っても検証に時間がかかるかもと思った場合は、要確認ということで下線をひくなどしてチェックした上で他の問題に移るというのも戦術としてはありです。

 

選択肢ウの「高い市場占有率をもつ企業は、しばしば同種製品市場での競争相手となる他の上位企業と相談し、それぞれの製品の価格に関する意思決定を行うことがある。」というのは価格カルテルなので、やっちゃダメですね。

なので、「これによって市場における競争の公正性が担保され」という記述は明らかに×です。

 

選択肢エでは、「マーケティング・コンセプトでは、顧客指向が最優先課題であるため」とありますが、「最優先」のような極端な強調ワードが出てくるような選択肢は断言系に並び、誤りである可能性が高い選択肢です。

なので選択肢をぱっと読んだ段階で、その極端ワード周辺に誤りが隠れていないか探しにかかると良いと思います。

この選択肢の場合、マーケティングコンセプトは

生産志向→製品志向→販売志向→顧客志向→社会志向

と変化してきたので、「顧客指向が最優先課題」と断言するのは誤りだと考えられます。さらに、顧客志向の説明として「新製品の市場導入期においては利益指向を追求しない」とありますが、ここも新製品の市場導入期にスキミングプライス(初期高価格)戦略を取ることもあるのでおかしな表現です。

ですので、選択肢エも×とできます。

 

以上から選択肢イが正解となります。

 

 

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