【過去問解説(経済学)】H30 第20問  関税の効果と余剰

今日は、経済学 H30 第20問 について解説します。

 経済学 H30 第20問

下図は、自由貿易地域の理論を描いたものである。自国が農産物の市場を開放し、貿易を行っている。
A国から輸入される農産物の価格は PA、B国から輸入される農産物の価格は PB とする。
当初、自国は、価格の低いA国から農産物を輸入し、その農産物には関税がかかっていた。そのときの国内価格は PA’ である。
しかしながら、歴史的な背景から、自国はB国と自由貿易協定を締結した。
その結果、B国からの農産物には関税がかからず、国内価格は PB になるが、域外のA国からの農産物には関税がかかる。
この図に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

〔解答群〕
ア 関税が賦課された価格 PA’ に比べて、自由貿易協定を締結した後の価格 PBでは、自国の消費者余剰は □HMNK だけ大きくなっている。
イ 自国がB国から農産物を輸入するときの国内の生産者余剰は、A国から農産物を輸入していたときの生産者余剰よりも □PAGNPB の分だけ小さくなる。
ウ 自由貿易協定の締結によって、自国が失う関税収入は、□HIJK である。
エ 自由貿易協定の締結による貿易創造効果は、△HLM と△KNR であり、貿易転換効果は、□HLRK である。

解説

関税の効果と余剰に関する問題です。
関税の効果については、まとめシートで以下の通り解説しています。

それでは選択肢をみていきます。

:誤りです。
価格がPA’→PBに下がった場合、消費者余剰(黄色△部分)は下図の様に変化します。


消費者余剰が増えるのは□PA’HMPBであり□HMNKではないためこの選択肢は誤りです。

:誤りです。
価格がPA’→PBに下がった場合、生産者余剰(青色△部分)は下図の様に変化します。

消費者余剰が減るのは□PA’KNPBであり□PAGNPBではないためこの選択肢は誤りです。

:正しいです。
自由貿易協定の締結までは下図の左の状態であり、輸入量×差額(PA’-PA)の関税収入がありました。
自由貿易協定の締結後は下図の右に変化し、いままでの関税収入が無くなります。


関税収入に該当する部分は上図左の赤枠部分□HIJKのため、この選択肢は正しいです。

:誤りです。
貿易創造効果は貿易によって生まれる余剰、貿易転換効果は貿易によって失われる余剰を指します。
まず、貿易によって生まれる余剰(色が増えている部分)は下図右の緑で塗りつぶした△の部分×2です。


□HLRKについても一見増えているように見えますが、こちらは自由貿易協定の前にも関税収入として政府余剰に組み込まれていました。
余剰の種類が変わっただけで、余剰自体が増えているわけではありません。

次に、貿易によって失われる余剰(色が減っている部分)は下図のオレンジで塗りつぶした□の部分です。

このオレンジの部分は、自由貿易協定の前に関税収入として政府余剰に組み込まれていました。
ところが自由貿易協定によって関税をかけることが出来なくなり、この部分の余剰が減少しています。

よって貿易創造効果は、△HLM と△KNR であり、貿易転換効果は、□LIJRになります。
選択肢は「貿易創造効果は、△HLM と△KNR」までは正しいですが、「貿易転換効果は、□HLRK」の部分が誤りです。


以上から、正解は選択肢ウとなります。

 

 

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