【過去問解説(企業経営理論)】H30第1問 多角化

今日は第1問の多角化についてです。

 

H30 企業経営理論 第1

企業の多角化に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 外的な成長誘引は、企業を新たな事業へと参入させる外部環境の条件であるが、主要な既存事業の市場の需要低下という脅威は、新規事業への参入の誘引となりうる。
イ 企業の多角化による効果には、特定の事業の組み合わせで発生する相補効果と、各製品市場分野での需要変動や資源制約に対応し、費用の低下に結びつく相乗効果がある。
ウ 企業の本業や既存事業の市場が成熟・衰退期に入って何らかの新規事業を進める場合、非関連型の多角化は、本業や既存事業の技術が新規事業に適合すると判断した場合に行われる。
エ 事業拡大への誘引と障害は、企業の多角化の形態や将来の収益性の基盤にまで影響するが、非関連型の多角化では、既存事業の市場シェアが新規事業の市場シェアに大きく影響する。
オ 内的な成長誘引は、企業を多角化へと向かわせる企業内部の条件であり、既存事業の資源を最大限転用して相乗効果を期待したいという非関連型多角化に対する希求から生じることが多い。

 

それでは各選択肢を見ていきましょう。

 

選択肢アについては、主要な既存事業の需要が減ってきたら、企業は存続のために新しい収益源を確保する必要があり、新規事業に参入しようとします。そのため、この選択肢は正しいと考えられます。

 

念のため他の選択肢も見てみます。

選択肢イの「特定の事業の組み合わせで発生する」のは相乗効果、「各製品市場分野での需要変動や資源制約に対応し、費用の低下に結びつく」のは相補効果で、ペアになっている用語が入れ替わっています。このようなペアになっている用語の入れ替えは、とてもよくある誤りの選択肢の作り方のパターンですので、ペアになる用語が出たら入れ替わっていないか警戒しましょう。

 

選択肢ウの「本業や既存事業の技術が新規事業に適合すると判断した場合に行われる」のは非関連型でなく、関連型の多角化です。よってこの選択肢は×と考えられます。

 

選択肢エの「既存事業の市場シェアが新規事業の市場シェアに大きく影響する」のも非関連型でなく、関連型の多角化です。関連しているからこそ新規事業にも既存事業の影響が及びます。よってこの選択肢は×と考えられます。

 

選択肢オも既存事業の資源を最大限転用したい、というのは非関連型でなく関連型の多角化で生じる誘引ですので×と考えられます。

 

以上から正解は選択肢アとなります。

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2件のフィードバック

  1. いつも有益な情報をありがとうございます。
    ウは関連多角化にあたるので×というのがどうしても引っかかりまして。近年では、大きな事業転換・多角化として企業が持っているコア技術を全く違う製品や分野に活用する例があるかと思います。(空想ですが、衣料品メーカーが、衣服に用いている繊維を農業(土)に活用できると発見して野菜生産を始める。など)

    この場合はアウトプット(消費者視点)で見ると衣料品と野菜という全く違うものなので無関連多角化に思えます。 それとも、無関連多角化というのは企業内部での話しでとにかく「関連する」技術を用いていたら関連多角化である。ということなのでしょうか?

    1. ご質問ありがとうございます。
      仰る通り、確かにこの選択肢は完全に×にはできない面があるかと思います。
      企業経営理論には時々、このような微妙な選択肢が出題されることがあります。

      試験テクニック的な話になってしまいますが、そのような場合は問題文の[最も適切なものはどれか]という指示に従って、複数のそれらしい選択肢の中から一番それらしいものを選んでいきます。
      今回の問題の場合、選択肢アと選択肢ウでどちらがより適切かというのを比較します。
      そうすると、選択肢アは明らかに〇ですが、選択肢ウは〇と言えなくもない、というくらいなので、明らかに〇である選択肢アを選ぶ、という形になります。

      テクニック的な話で完全にモヤモヤが解決できたかわかりませんが、企業経営理論にはこういうちょっとモヤモヤする問題がたまに出てくるので、攻略法の一つとして頭に入れておいていただけると幸いです。

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