【過去問解説(企業経営理論)】R1 第31問 価格戦略

今日は企業経営理論R1第31問について解説します。

R1 企業経営理論 第31問

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
原油や原材料価格の低下、あるいは革新的技術の普及は、製造ならびに製品提供にかかる変動費を減少させるため、販売価格の引き下げが検討されるが、価格を下げることが需要の拡大につながらないケースもある。企業は、需要の価格弾力性や交差弾力性を確認したり、競合他社の動向や顧客の需要を分析、考慮したりして、価格を決定する
(設問 1)
文中の下線部①に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 企業は、製品Aの価格変化が製品Bの販売量にもたらす影響について、交差弾力性の値を算出し確認する。具体的には、製品Aの価格の変化率を、製品Bの需要量の変化率で割った値を用いて判断する。
イ 牛肉の価格の変化が豚肉や鶏肉の需要量に、またコーヒー豆の価格の変化がお茶や紅茶の需要量に影響することが予想される。これらのケースにおける交差弾力性は負の値になる。
ウ 消費者が品質を判断しやすい製品の場合には、威光価格が有効に働くため、価格を下げることが需要の拡大につながるとは限らない。
エ 利用者層や使用目的が異なるため、軽自動車の価格の変化は、高級スポーツカーの需要量には影響しないことが予想される。こうしたケースの交差弾力性の値は、ゼロに近い。

(設問 2 )
文中の下線部②に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア ウイスキー、ネクタイ、スーツなどの製品では、低価格の普及品から高価格の高級品までのバリエーションを提供することがある。このように、複数の価格帯で製品展開することを「プライス・ライニング戦略」と呼ぶ。
イ 短期間で製品開発コストを回収することを目指して設定された高い価格を「スキミング価格」と呼ぶ。このような価格設定は、模倣されやすい新製品に最適である。
ウ 発売当日にCDやDVDを入手することに強いこだわりを持ち、価格に敏感ではない熱狂的なファンがいる。新製品導入にあたり、こうした層に対して一時的に設定される高価格を「サブスクリプション価格」と呼ぶ。
エ 若者にスノーレジャーを普及させるために、多くのスキー場は、往復交通費にウェアやスノーボードのレンタル料やリフト券を組み合わせた「キャプティブ価格」を設定し、アピールしている。

解説

今回は価格戦略に関する問題です。

それでは早速各設問を見ていきましょう。

【設問1】
価格を決定する要因である、需要の価格弾力性や交差弾力性について問われています。

ちなみに、需要の価格弾力性とは、ある財の価格が変化したときにその財の需要量へどれだけ影響を与えるかを表したもので、価格弾力性が大きいということは、少しの価格の変化が需要量に大きく影響を与えるということを、逆に価格弾力性が小さいということは、多少価格が変化しても需要量はそれほど影響を受けないということを意味しています。
また、交差弾力性とは、ある財Aの価格が変化したとき、その変化が他の財Bの需要量へどれだけ影響を与えるかを表したものです。交差弾力性が正であれば代替財、交差弾力性が0であれば独立財、交差弾力性が負であれば補完財となります。

これを踏まえて各選択肢を見ていきましょう。

選択肢アは、交差弾力性の求め方を知らないと判断が難しいかもしれません。
製品Aの価格変化が製品Bの販売量にもたらす影響についての交差弾力性は
製品Bの需要変化率/製品Aの価格変化率
によって求められます。
そのため、「製品Aの価格の変化率を、製品Bの需要量の変化率で割った値を用いて判断する。」は誤りで、「製品Bの需要量の変化率を、製品Aの価格の変化率で割った値を用いて判断する。」ため、この選択肢は×です。
上記の求め方を知らなかった場合は一旦パスして他の選択肢を見ていくようにしましょう。

選択肢イの牛肉に対する豚肉や鶏肉やコーヒー豆に対するお茶や紅茶は代替材と考えられ、上記で説明した通り、代替材の交差弾力性は正です。そのため「これらのケースにおける交差弾力性は負の値になる。」という記述は誤りと考えられます。

選択肢ウの威光価格は「消費者が品質を判断しやすい製品」ではなく、消費者が品質を判断しにくい製品に有効に働きます。よってこの選択肢は×と判断できます。

選択肢エの軽自動車に対する高級スポーツカーは、独立財に近いと考えられますので、交差弾力性はゼロに近く、この記述は○と考えられます。

以上から、正解は選択肢エとなります。

ちなみに、もし選択肢アをパスしていたとしても、選択肢エは○と判断できるかと思います。

 

【設問2】

設問2は様々な価格政策について問われています。

選択肢アは、その通りで、複数の価格帯で製品展開することをプライス・ライニング戦略といいます。

念のため残りの選択肢も見ていきましょう。

選択肢イは、前半の「短期間で製品開発コストを回収することを目指して設定された高い価格を「スキミング価格」と呼ぶ。」という記述までは正しいですが、スキミング価格は模倣されにくい新製品に向く価格設定方法です。よってこの選択肢は×と判断できます。

選択肢ウのサブスクリプション価格とは、利用したサービスの量ではなく期間に応じて課金するものです。よってこの選択肢は×と判断できます。

選択肢エのキャプティブ価格とは、プリンターとインクのように、主製品は安く売って、付属品を高く売って儲けるという形の価格設定方法です。よってこの選択肢は×と判断できます。

以上から、正解は選択肢アとなります。

 

 

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