【過去問解説(経営法務)】R4 第7問 株主総会の議決権

今日は、経営法務のR4 第7問について解説します。

経営法務 R4 第7問

 X株式会社(以下「X社」という。)は、Y株式会社(以下「Y社」という。)、Z株式会社(以下「Z社」という。)とともに、国内に 3 社が出資する合弁会社(株式会社の形
態)を設立して、共同事業を行うことを検討している。

以下の会話は、X社の代表取締役甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話の中の空欄A~Dに入る数値と語句の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

甲 氏:「先日、Y社の担当者とZ社の担当者との間で、合弁会社の設立についての会議をしました。合弁会社が実施する業務や弊社、Y社、Z社の役割分担については、だいたい意見が一致したのですが、出資比率をどうするのかで、なかなかまとまっていません。合弁会社の出資比率をどの程度にするのかは、どのような視点から検討すればよいのでしょうか。

あなた:「出資比率をどうするのかはとても重要です。合弁会社で、議決権制限が付いていない普通株式のみを発行する場合、出資比率は、議決権比率となります。定款で特別に定めをしない場合、X社の出資比率を とすると、合弁会社の株主総会におけるいわゆる普通決議事項について拒否権を有し、単独で議案の可決を阻止することができます。また、X社の出資比率を とすると、株主総会のいわゆる 事項について単独で決定権を有することになります。

甲 氏:「なるほど、出資比率というのは大切なのですね。でも、出資比率を大きくすると、それだけ合弁会社の事業が立ち行かなくなった場合の責任も重くなると思います。出資比率を大きくしなくても、重要な事項の決定については、弊社の意見を反映させたいと思います。どうすればよいでしょうか。

あなた:「合弁会社の株主間契約で、重要な事項の決定は株主全員の合意によることとする定めを置いたり、事案によっては、定款で株主総会や取締役会の定足数・決議要件を加重することを定める場合もあります。合弁会社の株主間契約で、重要な事項の決定は株主全員の合意が必要と定めた場合、株主全員の合意が得られず、重要な事項が決定できなくなるという、いわゆる が生じる場合があります。このため、このような場合を想定し、いわゆる 条項を設けて、対応手順などを定めておくことも重要です。

甲 氏:「いろいろあるのですね。また、話が進みましたら相談します。」

あなた:「分かりました。契約書の内容を相談する必要があれば、専門の弁護士を紹介することもできますので、お気軽にご相談ください。」

 

〔解答群〕
ア A: 3 分の 1    B: 3 分の 2   C:特別決議  D:クローバック
イ A:50 %    B:51 %      C:特殊決議  D:クローバック
ウ A:50 %    B:51 %      C:特殊決議  D:デッドロック
エ A:50 %    B: 3 分の 2   C:特別決議  D:デッドロック

解説

国内に 3 社が出資する合弁会社(株式会社の形態)を設立する際の出資比率についての会話ですが、内容は株式総会の議決権に関する問題です。

株式総会の議決権について、まとめシートでは、「株式会社の機関の詳細」の項目株主総会の決議の中で以下の通りまとめています。

 

 

株主総会の決議

株主総会の決議には、普通決議特別決議があります。

普通決議も特別決議も、議事を進め議決するのに必要な最小限の人数である定足数は、原則として議決権を行使できる株主の議決権の過半数です。例えば、100株のときであれば、定足数は51株です。

普通決議の議事を議決するために必要な最小限度の得票数である表決数は、出席株主の議決権の過半数です。例えば、出席株主の議決権数が51であれば、表決数は26です。主な決議事項は、役員の選任、監査役以外の役員の解任、計算書類の承認、役員の報酬、剰余金の分配(配当)などです。

特別決議の表決数は、出席株主の議決権の2/3以上です。例えば、出席株主の議決権数が51であれば、表決数は34です。主な決議事項は、監査役の解任、資本金の減額(減資)、定款の変更、事業譲渡や合併などの組織再編等、解散などです。

~以下、略~

 

問題本文内に、「議決権制限が付いていない普通株式のみを発行する場合、出資比率は、議決権比率」と記載があることを見落さなければ、問われている内容は「株主総会の決議」と判断が出来ます。すると定番の「株主総会の決議」知識で対応できます。上記の基本的な知識をベースとして、今回問われているA~Dの内容について次に記載します。

:「合弁会社の株主総会におけるいわゆる普通決議事項について拒否権を有し、単独で議案の可決を阻止することができる」とは、阻止できるのは議決権比率50%=出資比率A50% 

BとC:「出資比率を とすると、株主総会のいわゆる 事項について単独で決定権を有することになる」とは、出資比率=議決権比率を2/3以上持つと特別決議事項の決議が出来ると読み替えると、B3分の2、C特別決議

「デッドロック条項」とは「合弁会社の株主間契約で、重要な事項の決定は株主全員の合意が必要と定めた場合、株主全員の合意が得られず、重要な事項が決定できなくなる膠着状態=デッドロックになった際に、どのように対応するのかを事前に取り決めておくことで、対等の出資比率などの場合に発生します。「クローバック条項」とは、支給済みの業績連動報酬を会社に強制返還させる仕組みのことです。Dデッドロック

 

以上から、正解は選択肢エとなります。

 

Dを知らなくても他の選択肢で正解にたどりつくことができた問題です。

デッドロック条項は、ABCが判明できれば、Dが解らなくても正解デッドロックが選択できます。 知らない用語が記載されていても惑わされなければ、保持している基本的な知識で対応できる問題でした。

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